[第7回] POPで迷ってしまうお客
コモディティとノンコモディティ
結城義晴
POPはシンプルにすればいいんですかね。
でもシンプルな方が難しいし、作り手のセンスが出ますよね。
中山政男
そのとおりですね。
どのPOPでも全てシンプルがいいとは言いませんが、
懲りすぎてしまって残念なものが多く見られます。
結城
異常なくらいですね。
外国のスーパーマーケット関係者がこれらのPOPを見たら、
きっと驚きますよ。ウォルマートは商品の6割がコモディティで、
4割がノンコモディティなんです。
その4割のノンコモディティに対してショーカードをつけたり、
説明をしたりするわけです。ノンコモディティでも、お客さんはよく知ってますから、
それらが売り場のあるべきところにキチンとあって、
いま販売価格はいくらなんだということが分かって、
間違わないためにキチンと商品名が書かれていれば、
お客には十分なんです。コモディティ商品は、お客はみんな知っていますから、
わざわざコカ・コーラと商品名を書かなくても価格だけでいいわけです。
中山
そう、本当はお客にとってはその方が見やすい。
結城
日本のスーパーマーケットも売上げの6割から7割は
コモディティでしょう。
そのコモディティが今日はいくらかということを
お知らせするのは意味があるんですね。でもそれ以上に、ノンコモディティの「POP」が
売り場に氾濫しているとしたら、
必要なコモディティが見つけづらい、
お客にとっては不便な売り場になっているということです。売り場のバランスが大事なんですね。
一方で、均一セールにもかかわらず、
商品名と価格のPOPタイトルが売り場にズラリと並んでいる。
言葉の氾濫
中山
こういうことが現場で起こっているんですね。
1つの売り場に
「お買い得」「超お買い得」「超特価」「店長の一押し」…
と、同じようなタイトルのPOPがたくさん貼り付けられている。
また「広告の品」のタイトルより目立つものがあるから、
チラシを片手に広告商品を探しているけど、見つけられない。
しかもタイトルが多いから、いっそうわからない。お買い得品が一番安いのか?
ご奉仕品が一番安いのか?何が一番安いのかがわからないから、お客は迷いますね。
企業のルールをお客にまで伝えなくてはいけないんだは思うんですが。
結城
それが問題ですね。
ウォルマートは基本的に「エブリデイ・ロープライス」政策です。
たとえばコカ・コーラ2リットルを98セントで1年間、
売価を変えずに売るわけです。これが基本。それ以外の一部の商品を「ロールバック」として、
ある時期だけ売価変更して販売する。
ウォルマートには、この2つのルールしかない。
だから非常に分かりやすい。
中山
そうですね。
その企業の特色、ルールが決められて、お客に浸透している。
結城
コカ・コーラ2リットル、98セントをメーカーと交渉して、
78セントで売るときに、「ロールバック」とするわけです。売れていくとメーカーも利益が出ますから、
68セントとしましょうとなった場合、
それをまたロールバックとする。「エブリデイ・ロープライス」と「ロールバック」しかない。
それを私は「正札販売」と言っているんです。それに比べて、日本の売り場は
「お買い得品」の、
「今月の特売」の、
「お勧め品」の、、、
何が何やらわからない。
中山
均一セールなら「99円の市」というような
大きなパネルを一つ掲げれば、済むわけですね。
それなのに商品名に99円の価格を表示した、
同じようなプライスカードがズラリと並んでいる。
これが、今、流行っているんですね。
もしかしたらお客は大量のPOPにびっくりして、
購入することもあるでしょうが。
結城
その時だけでしょうね。
やがてお客は飽きますし、気にしなくなるでしょうね。
中山
私は何十年とPOPのデザインにかかわってきましたから、
こういう状況をみるとちょっと悲しいんです。(笑)
結城
そうでしょうね。
でも、ある種の麻薬みたいなものですね。
お客をいい気分にするというのではなく、
作ることが目的になってしまっている、
作らずにいられないという意味ですが。
<POPの乱れもなく、分かりやすく掲示している>
つづく