vol.01 「物流業界」は貴重なパートナー
★目立たず常に仕事をし続ける縁の下の力持ち
近年「物流」といわれて、「なんのことかわからない」という人は
さすがに少なくなっているように思う。
小売業・サービス業に属して、日々、商品を仕入れたり発送したりしている人なら、
なおさらそうだろう。
それでも、物流の仕事に対する関心は、まだまだ低いと言わざるを得ない。
一般消費者であれば、食品はじめ日常生活に必要な品々などについて、
小売店頭に並んでいるのを見て、はじめてそれらを意識する。
だが、商品がどうやってそこに並んだかには無頓着で、
生産者や製造者に思いは至っても、物流業者の存在まで想像する人は少ない。
当然のことだが、物流がきちんと機能しなければ、
必要な人に必要なモノが、必要なときに必要なだけ供給されることはない。
そうやって社会や産業が物流に支えられていることは、
地震でライフラインに支障が出るなど、非常事態にならないと実感されにくいのだ。
スーパーマーケットは、生存のための配給基地となった。
コンビニは、余震の続く闇のなかの灯台に変わった。
フードサービスは、温かい食べ物の炊き出し係に徹した。
メーカーや問屋は、補給部隊の役を担った。
これは、商人舎代表の結城義晴さんが著書『メッセージ』(商業界刊)に、
「阪神大震災」のときの商業者の対応について書いた一節だ。
この後、「商業という仕事を貫いた同志たちを誇りにしよう」と、
風化させてはいけない「思い」について言及する、力強いメッセージになっている。
しかし、商業者向けの言葉だからだろうが、
ここでも数々の必需品を実際に被災地に届ける役割を担った人たち(物流業者)
の存在にまでは、残念ながら触れられていない。
このように、物流活動というのは、重要なのに地味で目立たず、
ふだんは問題なく行われているのが当然視される、そんな宿命をもった仕事なのだ。
まさに、「縁の下の力持ち」を地で行くと言ってよい。
大切なのは、ここにきて「物流」が単純に「モノを運ぶ仕事」ではなくなり、
SCM(サプライチェーン・マネジメント)といった形で、
原材料の供給業者から顧客まで含めた一気通貫で、
効率的に管理していこうという時代になりつつあることだ。
そうなると、小売業・サービス業にとって物流業者は、
一方的にコストダウンを押し付けるような相手ではなく、
「Win-Win」の関係で、同じ目的のために協調しながら
仕事をしていくパートナーになっていくことになる。
相互に理解を深めることは、もう避けられない状況にある。
そこで、そんな「知られざる」パートナーを理解する助けとして、
物流業界の基礎知識について、連載で紹介していこうと思う。
少しでもお役に立てれば幸いである。
(続きます)
<by 二宮 護>
【事務局からのご案内】
本ブログは、『物流業界大研究』の新刊発刊を記念して、
二宮護氏に短期集中連載を依頼したことにより、実現しました。
これから毎週火曜日に、12回にわたってブログをアップします。
<連載の予定>
01 「物流業界」は貴重なパートナー
02 物流は流通機能の一部を担う
03 物流を構成する六つの要素
04 物流とロジスティクス、SCMはどこが違う
05 物流業界の業界規模ってどのくらい?
06 自社物流も含めた「物流」の市場規模
07 物流活動を支える各プレイヤーたち
08 輸送事業の中心を占める陸運業界
09 貿易や産業基盤輸送を担う海運業界
10 高付加価値商品の輸送に長じる空運業界
11 保管や流通加工などを行う倉庫業界
12 荷役を担う港湾運送やターミナル業界
是非、ご愛読ください!