vol. 03 物流を構成する六つの要素
★「輸送」「保管」だけが物流の活動ではない
生産と消費の分業化によって、三つの“隔たり”が生じた。
この隔たりを埋め、経済活動をスムーズに行うための役割が「流通」。
「物流」はその一部として、「輸送」と「保管」の機能を果たしている。
ここまでは前回の内容。
では、物流とは具体的にどんな仕事なのか。
すぐに思い起こすのは、トラックや船による輸送活動だろう。
街を歩けば、頻繁に宅配便会社やコンビニのトラックなどを目にするので、
そう思うのも当然かもしれない。
だが、輸送活動はあくまで物流の表舞台。
実は私たちの目には触れないその裏で、重要な活動が行われている。
それが、保管、荷役(にやく)、包装、流通加工、情報管理などの活動だ。
輸送を含めたこれらの六つの活動が、
相互に密接に関連しながら存在していて、
物流の仕事を構成している。
それぞれの活動の内容を、簡単に紹介しておこう。
◎輸送
トラック、鉄道、船、飛行機といった輸送機関を使い、
モノを移動させること。
厳密には、地域間で長距離大量の移動を行うことを「輸送」、
近距離で小口の移動を「配送」、
工場や物流センター内の狭い範囲内での移動を「運搬」という。
◎保管
運んだモノをいったん留め置くこと。
これにより、需要に応じたタイミングで供給するための「需給調整」、
大量輸送されてきたモノを、輸・配送するために小分けしたり、
行き先別にまとめたりするなどの「輸送調整」、
包装や流通加工などの活動を提供するための「物流拠点」
という三つの大切な役割を果たしている。
◎荷役
モノを輸送したり保管したりする際に、
輸送機関から積み降ろしたり、倉庫に出し入れしたりすること。
◎包装
輸送や保管をするにあたって、
そのモノの価値や状態を保護したり、向上させたりするために、
適切な容器に入れたり包んだりすること。
◎流通加工
生産者や流通の川上から送られてきたモノを、
川下の業者や消費者が便利なように加工すること。
たとえば、メーカーから大きな箱に大量に詰めて送られてきた商品を、
小売店頭で扱いやすい小さな化粧箱に詰め替えたり、
値札をつけたり、キズがないか検査したりするなど。
商品を組み立てて、半完成品や完成品に仕上げるようなことも含まれる。
◎情報管理
以上のような諸々の活動をより合理的、効率的に行えるように、
運ぶべきモノがどこにどんな状態であるかといった情報を、
コンピュータや通信回線を使って管理すること。
ここで重要なのは、
近代的な真の物流業者たちは、過去の単なる“運送屋”からの脱皮を目指して、
輸送活動だけでなく、その他の活動に力を入れてきたという事実だ
たとえば、宅配便分野でヤマト運輸が急成長した主要な理由として、
優れた情報管理システムの構築があったように。
小売業・サービス業サイドも、パートナーとしての物流業者を選ぶ際には、
そうした総合力で判断する時代になっていることを、知っておかなければならない。
(続きます)
〈by 二宮 護〉