vol. 05 物流業界の業界規模ってどのくらい?
★おおむね20兆円超の規模と見られる
現在の物流事業者は、
輸送や保管といった関連する各種事業を、総合的に行う方向にある。
だが元々は、事業ごとに業界を形成して現在に至っているために、
それらを「物流業界」としてひと括りに捉えるのは、ややむずかしい。
一つの手掛かりとして、総務省の『日本標準産業分類』には、
「大分類H 運輸業、郵便業」というのがある。
そして、財務省のシンクタンクである財務総合政策研究所によると、
この標準産業分類による「運輸業」の業界規模(平成19年度)は、
事業者8万2100社、売上高67兆3600億円 従業員316万人だとしている。
ただしこの中には、モノを運ぶ貨物部門だけでなく、
ヒトを運ぶ旅客部門が含まれている。
しかも鉄道会社などには、本業の「運輸」部門よりも、
「流通」や「不動産」部門などのウエートが高いところが多く、
その分によって水増しされた数字になっている。
一方、国交省が事業ごとに行った調査報告がある。
それぞれ、トラック輸送業13兆円、外航海運業4兆7000億円、
倉庫業1兆6000億円、港湾運送業1兆1700億円、
内航海運9000億円、航空利用運送事業8000億円などとあり、
これらを単純に積み上げると、
事業者約7万5000社、売上高約23兆5000億円、従業員約150万人となる。
調査期間や調査方法が異なるために、あくまで参考数字だが、
これが「物流業界」の業界規模をある程度示している。。
参考までに他の民間調査機関の調査を見てみても、
業界全体の市場規模を20兆円弱としており、
国交省の統計をまとめた概数とも近い数字になっている。
ちなみに、国交省の推計による物流業界の業界規模を、
他産業と比べてみよう。
約7万5000社という「事業者数」は、
建設業や卸売業、小売業の30万〜40万社よりは、かなり少ない。
だが、製造業の各産業(数千社からせいぜい5万社)に比べると、かなり多い。
これは、トラック事業者のように零細事業者が多いことが影響している。
「従業員数」は約150万人だが、
製造業の各産業は一部を除いて数十万人から100万人超なので、
事業者数ほどの差はない。
これも、物流業界に零細事業者が多いことの一つの証明だといえる。
ちなみに、建設業、卸売業、小売業の従業員数は、
350万〜500万人超となっている。
約23兆5000億円の物流産業の「売上高」は、
百数十兆円から400兆円を超す建設業、卸売業、小売業には遠く及ばないが、
金属製品製造業とほぼ同規模、
21兆円超の石油製品・石炭製品製造業や鉄鋼業とも近い規模だ。
物流業界としての業界規模はこの程度だが、
物流事業の事業規模はこんなものではない。
その理由は次回に。
(続きます)
〈by 二宮 護〉
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