vol. 08-2 大きく存在感を増した自動車輸送
★各事業者はきわめて零細性が強い
わが国の国内輸送の大半は陸運によるが、
なかでも輸送重量(トン数)で9割超(トンキロでは6割超)の分担率と、
圧倒的な存在感を示しているのが、トラックなどの自動車輸送だ。
この背景には、モータリゼーションの進展に加えて、
国土面積が狭い上に、都市部に人口が集中するわが国にあって、
自動車輸送はドア・ツー・ドアで小回りが利くなど、
機動性と利便性の高い点が歓迎されたことが大きい。
さらには、多品種少量生産・販売の体制が進み、
製販業者が原材料や部品、商品の在庫をできるだけ圧縮し、
必要なモノを必要なときに必要なだけ入手する
小ロットのジャスト・イン・タイム物流が求められ、
それに応えられる形態ゆえに伸びたという面も見逃せない。
現在では、生産活動や消費生活などに関わる広範な荷物を扱っており、
その内訳は、いわゆる緑ナンバーの「営業用」自動車では、
砂利や石材、木材、廃棄物などの「建設関連貨物」が35%、
機械や金属、石油製品などの「生産関連貨物」が34%、
食料工業品、日用品、農水産品など「消費関連貨物」が31%。
一方、白ナンバーの「自家用」自動車のほうは、
65%が「建設関連貨物」とやや偏った構成で、
残りの21%が「生産関連貨物」、14%が「消費関連貨物」となっている
(いずれも2006年度、全日本トラック協会調べ)。
自動車輸送事業は、次のように分類される。
◎一般貨物自動車運送事業
1台のトラックに単独の荷主の荷物を積んで輸送する事業。
霊柩(れいきゅう)運送事業や引っ越し事業なども含まれる。
◎特別積合せ貨物運送事業
不特定多数の荷主の荷物を混載し、
定時にターミナルと呼ばれる物流施設間を結んで輸送する事業で、
「特積み」と略称されている。宅配便事業も含まれる。
◎特定貨物自動車運送事業
継続的に1企業など特定の荷主の荷物に限定して輸送する事業。
◎貨物軽自動車運送事業
軽自動車を使ったトラック輸送事業。
「軽貨物」として黒ナンバーで営業。バイク便などが含まれる。
国交省の資料によると、
これらの自動車輸送事業者の総数は、個人事業主も含んで6万3122者。
そのうち91・4%の5万7672者が「一般」事業者で、
残りが「特積み」292者(0.5%)、「特定」761者(1.2%)、
「霊柩」4397者(7.0%)という構成(いずれも08年3月末現在)。
なお、「軽貨物」は別統計だが、
同時期で15万7258者が存在している。
「軽貨物」を除いた6万3000余の総事業者の従業員数は、
07年3月末現在で132万人、うち運転者数が約92万人。
保有車両数は、08年3月末現在で特積みトラックが1万6000台、
「一般」「霊柩」「特定」を合わせた地場トラックが111万6000台で、
これ以外に自家用トラックが588万台ほど使われている。
事業者の規模では、
「一般」の99.9%、「特積み」でも90%弱は中小企業と、
きわめて零細性の強い業界である。
従業員数では10人以下が47%、30人以下で82%、100人以下で89%。
車両数は10両以下が55%、30台以下で87%、100台以下で93%。
資本金では300万円までが19%、1000万円までで63%、
3000万円までで87%が含まれている(08年3月末現在)。
自動車輸送事業の営業収入は、07年3月期でおよそ14兆3000億円。
低下傾向からいったん持ち直したが、環境問題などで逆風も受ける。
さらに、08年秋からの世界的な不況の影響で、
輸送量とともに落ち込んでいたが、ようやく反転の兆しが見えてきたようだ。
(続きます)
〈by 二宮 護〉