vol. 09 貿易や産業基盤輸送を担う海運業界
★国内対象の内航海運、海外貿易の外航海運
船舶を使った輸送事業が、いわゆる海運事業。
その海運のうち、国内を対象とするのが内航海運だ。
2007年度の輸送量は4億970万トン、トンキロでは2030億トンキロ。
輸送機関別の分担率でいうとトンで7.6%、トンキロでは34.9%と、
国内輸送の中核的な存在となっている。
戦後にわが国が物流量を増やしていく際に、
輸送量があまり増えずに分担率を下げ続ける鉄道に代わって、
増加分を自動車とともに吸収してきたのが内航海運である。
自動車輸送のような機動性や利便性はなくても、
長距離・大量輸送にはきわめて適した輸送モードとして、
自動車輸送を補完する形で存在意義を維持してきた。
現在でも輸送距離別の分担率では、
輸送距離を伸ばすほどにその存在感を増し、
500キロ以上ではほぼ自動車と互角、
750キロ以上になると自動車と逆転して最も分担率が高い。
わが国では古くから船舶輸送が行われてきたが、
近代になって沿岸部に多くの臨海工業地帯ができると、原材料を運び込み、
できあがった製品を消費地などへ運び出す役割を、中心になって担った。
それは現在にも続き、セメントや石油製品、鉄鋼を中心とした金属など、
いわゆる産業基礎物資の8割(トンキロベース)を運ぶとともに、
自動車や電気などの工業製品、
食料品や日用品といった生活物資などの輸送も手がける。
一方、海運事業のうち、海外との輸送を行うのが外航海運である。
日本は食料やエネルギー、工業原料といった資源に乏しく、
それらを海外から受け入れることで成り立っている。
さらに、輸入したエネルギーや原材料をもとに、
進んだ技術でつくり出した工業製品などを海外に輸出して外貨を獲得し、
世界有数の経済大国と呼ばれるまでになった。
貿易はわが国の死命を制するライフラインの役割を果たしており、
それを支える国際貨物輸送で非常に大きなウエートを占めているのが
外航海運だといえよう。
2007年のわが国の海上貿易(船舶による輸送)量と貿易額は、
9億6406万トンと107兆5541億円。
内訳は輸出が1億5022万トン(55兆2984億円)、
輸入が8億1384万トン(52兆2557億円)となっている。
品目別に見ると、輸出では機械類や乗用自動車、鉄鋼、電気製品など、
輸入では原油、石炭、鉄鉱石、
LNG(液化天然ガス)、LPG(液化石油ガス)、
トウモロコシや大豆、小麦といった穀物類などが多い。
地域別には、輸出全体の約7割が対アジア、次いで北米が1割弱、
残りが欧州、大洋州(オセアニア)、中東、中南米、アフリカと続く。
輸入では大洋州と中東がともに3割弱、アジアが2割5分近くで続き、
残りを北米、中南米、少し差があいて欧州、アフリカが分け合っている。
実は、外国から日本の港へ運ばれてきた物資や製品、
あるいは日本から輸出されるさまざまな貨物など、
外航海運の扱う荷物の6割弱を内航海運が日本各地の港へと運んでおり、
これは世界にもあまり例のないことだと言われている。
(続きます)
〈by 二宮 護〉