vol. 10 高付加価値商品の輸送に長じる空運業界
★国際輸送で存在感を高める航空輸送
貨物輸送において、スピードと確実性に優れているのが航空輸送だ。
航空機の大型化や増便などで輸送量を増やしてはいるが、
いかんせん他の輸送機関に比べて1回当りの輸送量が少なく、
量的な面で存在感を示すにはむずかしい面がある。
航空機による国内の貨物輸送量は、
2007年度で114万6000トン、11億4600万トンキロ。
輸送機関別の分担率は、それぞれ0.02%と0.2%であった。
だが、平均輸送距離は1045.5キロと、他の国内輸送機関より断然長い。
鉄道や内航海運の2倍以上、自動車と比較すると14.5倍である。
高コストながら、小さくて軽いものであれば遠距離を短時日で輸送でき、
輸送事業の一部のニーズに応える役割を担っているのだ。
一方、国際空運の輸送量は、07年度が315万2140トンであった
(うち輸出が160万6150トン、輸入が154万5990トン)。
このうちのわが国の空運事業者分が137万6070トン、
トンキロベースでは85億186万トンキロとなっている
(定期分で、超過手荷物分および郵便物を除く)。
その方面別の内訳は、アジア、米大陸、中国がそれぞれ20%を超え、
欧州が10%台で続いている。
大きく伸びているのは中国、韓国で、その他アジア、欧州方面では微増、
台湾、米大陸、太平洋、オセアニアは減少している。
航空輸送の大きな特徴は、小さく軽く貴重なものを運ぶのが得意なこと。
そこで、重量ベースではなく金額ベースで国際貨物輸送の状況を見ると、
1980年の船舶輸送と航空輸送の分担率は、91.4%対8.6%だったが、
徐々に分担率の差を縮めて、2006年には72%対28%で分け合うまでに
航空輸送が存在感を増している。
国際貨物の総輸送量のうち、航空機による割合を「航空化率」というが、
輸入ではダイヤモンド、貴石、航空機、半導体等電子部品、
航空機用内燃機関は、いずれも航空化率が96%を超えている。
また輸出では、真珠、半導体等電子部品、映像機器、科学光学機器、
医薬品などの航空化率が60%以上となっている(06年度。金額ベース)。
このように、国際航空輸送はここ20~30年で大きく勢力を拡大している。
その理由には、上記のように半導体等電子部品といった、
小さく軽量で高額な貨物の輸送が増えていることが一つ。
加えて「クーリエ」や「S/P(スモール・パッケージ)」と呼ばれる、
企業間中心の国際宅配便サービス(契約書や商品サンプルなどを運ぶ)で、
航空輸送が広く使われるようになったことなどがあり、
今後の拡大も大いに期待されている。
空運市場には、貨物輸送専門の航空会社だけでなく、
旅客輸送を兼業する航空会社やフォワーダー(本連載の7回目参照)、
「インテグレーター」と呼ばれる外国資本の巨大な総合物流会社
(UPSやフェデックス等)などが参入している。
日本では、フォワーダー以外の70数社の空運事業者のうち、
貨物の輸送実績のある定期航空輸送事業者は20社あり、
その営業収入の合計は3971億円(06年度)である。
(続きます)
〈by 二宮 護〉