vol. 11 保管や流通加工などを行う倉庫業界
★事業収入で1兆6000億円超の営業用倉庫
物流コストの3割強を占めるのが、保管コスト。
「保管」することにより、生産から消費までの「時間の隔たり」を埋め、
需要に応じたタイミングで供給するための需給調整が行われる。
物流上そうした機能を果たしているのが、倉庫事業だ。
倉庫は、保有者によって営業用倉庫、自家用倉庫など4種類に大別される。
わが国の全保管能力の2割弱程度を担っているのが、営業用倉庫だ。
そして、営業用倉庫は、「倉庫業法」で保管形態ごとに、
普通倉庫、冷蔵倉庫、水面倉庫などに分類されている。
約5300社の倉庫事業者のうち、
普通倉庫の事業者数は4100社あまり(2006年度)。
1965年から40年間を経て3.2倍に増えているが、
所管面(容)積についてはそれ以上に大きく増やしており、
1事業者当りの規模が拡大していることがわかる。
普通倉庫の入庫量と平均月末在庫量は、
2億3600万トンと3600万トン(2006年度)。
その内訳で突出したものはないが、化学工業品や食料工業品、
農水産品、雑工業品など、さまざまな工業製品が在庫として保管されている。
一方、冷蔵倉庫の事業者数は約1200社(2006年度)。
1975年からの30年間で数を少し減らしているが、
所管容積、入庫量、平均月末在庫量は各2倍強となっており、
こちらも1事業者の規模は拡大していることがわかる。
入庫量と平均月末在庫量は、1800万トンと280万トン(2006年度)。
そのうちの大半が食品で、
水産物、畜産物、農産物やそれらの加工品が多い。
倉庫では、保管することに加えて、
大量輸送されてきたモノを、輸・配送するために小分けしたり、
行き先別にまとめるなど輸送調整が行われることも多く、
包装や流通加工などといった、他の物流サービスを提供する
物流拠点としての役割も重要になっている。
国交省による倉庫事業の経営実態調査でも、
はっきりとその傾向がうかがえる。
普通倉庫業の事業別の売上構成を見ると、
普通倉庫事業は18.9%に過ぎず、貨物自動車運送事業15.9%、
港湾運送事業15.5%、利用運送事業13.1%と
輸送や荷役の比率が高まっている。
一方、冷蔵倉庫業では、
冷蔵倉庫事業が19.6%とやはり全体の2割を切り、
食品事業(食品加工・販売)が54.1%、
利用運送事業が10.6%となっている(いずれも2007年度)。
さらに、倉庫部門の収支を保管・荷役別に見ると、
普通倉庫業の1社平均の経常収益は、保管部分が8億9860万円、
荷役部分が6億4760万円。
冷蔵倉庫業では、同じく9億2080万円と5億1690万円と、
荷役部分のウエートもかなり高い。
倉庫業界全体は、営業収入で1兆6000億円超、
従業員数で10万名という規模となっている。
なお、近年、自家用か営業用かにかかわらず、
いわゆる物流センターや配送センターと呼ばれる
物流拠点をもつ企業も増えている。
倉庫とは単なるネーミングの違いというケースもあるが、
一般的に、倉庫は比較的長期の保管を行うもの、
物流センターや配送センターは、近々に出荷する在庫を留め置いて
流通加工などを行うものということができるだろう。
(続きます)
〈by 二宮 護〉