[8月8日]亀田メディカルセンターでホスピタリティを学ぶ
2011結城ゼミ夏合宿の三日目。
8月8日、ぞろ目の日。
第1期生から3期生まで、
そのうちの16人が参集した合宿。
最終日は、午前中、各自、自習して、昼前にまとめ。
それから鴨川の亀田メディカルセンターを訪問、見学。
ホスピタリティにあふれた総合医療サービス機関として超有名。
しかしアメリカで一般的なIHNの考えを採用した医療機関である。
Integrated Healthcare Network。
南房総地域の医療充実をめざし、
多様なネットワークサービスを展開する。
その根本にあるのが、
「患者さま」と呼ぶ姿勢。
2005年に誕生したカスタマー・リレーション部が、
この考え方を先導する。
亀田メディカルセンターは主に3つの機関で成り立つ。
急性期医療の亀田総合病院。
外来診療の亀田クリニック。
そして亜急性期医療の亀田リハビリテーション病院。
ここには全31科と100の診療室があり、
総ベッド数は1000床、医者400人、
看護師など職員を入れると総勢約3000人。
すべての機関が「患者さま」と呼び、
「カスタマー」ととらえる。
敷地内には、亀田医療技術専門学校もある。
立体駐車場があり、
月曜日なのに満車状態。
私たちは、カスタマー・リレーション部の山田剛士さんから、
40分ほどレクチャーを受け、質疑応答をしてもらい、
さらにメディカルセンター内のツアーをしてもらった。
医学は一人でできるが、
医療サービスは患者や地域との協働によってしかできない。
商品が顧客との協働によって販売されるのと同じ。
「医療の最終成果物」は何かと考えると、
それは「死」である。
だから亀田メディカルセンターは、
プロセスを重視しようと考えた。
したがってISO9001をとっている。
例えば、亀田は「個室病棟」にこだわる。
現代社会において、個室でないのは、
病院と刑務所だけといってよい。
いまやビジネスホテルでも、相部屋はない。
ところがサラリーマンも、
病院に入院すると相部屋で、
カーテン一枚で仕切られた空間で我慢させられる。
亀田は考えた。
病院だからこそ安らげる環境づくりが必要だ。
一番安らげるのは、
会いたいときに会いたい人と会えること。
医療にはこれが必要だった。
「リゾートは非日常、しかし病院は日常」
だから「安価な個室ビジネスホテル」並みの環境を整え、
価格を提案する。
「まず当たり前のことを当たり前にやろう」という発想が、
亀田メディカルセンターにはある。
しかしこれは医療業界から見ると、
非常識そのものだった。
地域医療ネットワークの質を上げるには、
顧客は内部の先生、業者、
さらに製薬メーカーや医療機器メーカーと考える。
彼らと地域医療連携の構築をめざし、
患者を中心に連携する。
病院長直轄・3人の専従でスタートしたカスタマーリレーション部には、
3つの使命があるが、その第一が、
「患者様満足向上にサービス業務を通じ貢献する」
もう、ホスピタリティ産業そのもののコンセプト。
私は山田さんの話を聞いているだけで、
心から嬉しくなってしまった。
いつも商売の話をしていることと全く同じ。
そして医療サービスの世界だけに、
この領域特有の障害があったし、
イノベーションがあった。
それは細かな改善・改革の継続であった。
「イノベーションは、つまるところ、
経済や社会を変えなければならない」
ピーター・ドラッカーの言葉が、
私の胸をいっぱいにしていた。
千葉県房総半島の外房にある亀田メディカルセンター。
隣は有名な鴨川シーワールド。
しかしすごい人気で、東京駅および浜松町駅に、
入り口前から高速リムジンバスが直行している。
外来診療の亀田クリニック。
ロビーはホテルのようだ。
亀田クリニックは、独立型の外来専用施設。
外来専用専門スタッフや診療設備を用意する。
従来、入院を必要としていた医療を、
外来で行えるメリットを生み出した。
東京など県外からの患者は7%。
地域総合医療サービスを標榜しているから、
この外来診療は重要な機能。
6階建て、総床面積約2万2000㎡で、
31の全科、診察室約100室を有する総合病院。
2階が内科、4階が外科。
そしてその間の3階が、各種検査のフロア。
こうすると、内科でも外科でも、
検査を伴うことが多いから、
一つだけフロアを移動すれば検査できる。
さらに1階に眼科が配置されているのは、
眼圧検査など瞳孔を開いたりした場合、
階段を上り下りする必要もないし、
エレベーターやエスカレーターを使う負担もない。
私も定期的に眼圧を検査しているから、
患者への配慮がよくわかる。
さらに薬局の渡し口が同じ建物内にある。
ロビーからも自分の番があと何分かがわかるように、
モニター掲示されている。
これもとても便利。
多数の薬剤師が、分業システムで、
整然と仕事していて気持ちいい。
良くできた小売業や外食産業のバックヤードのようだ。
亀田クリニックの医療サービスをひとことで表現したのが、
「帰りは笑顔で」 という言葉。
次に急性期医療の亀田総合病院及び入院棟。
千葉県南部の基幹病院。
優れた人材、高精度機器を導入・ 駆使し、
集中治療部門(ICU、CCU、ECU、 NCU、NICU)を整備。
診療部門も含めた医療サービス全般にISO9001の認証を受け、
病院機能評価機構(一般病院種別B)の認定も受けている。
さらに1995年から、世界で初めて、
電子カルテシステムの本格運用 を開始し、
20年間、一切、紙は使われていない。
医療において徹底した情報活用を推進。
こちらはKタワーという13階建てのビルを中心に、
A棟、B棟、C棟、救命救急センター棟などで構成される。
こちらのロビーもホテルのよう。
入院案内の受付もホテルフロント仕様。
ロビーの横にコンシェルジュのコーナー。
ここで亀田メディカルセンターのすべての相談を受け付ける。
コンシェルジュの首から下げられたスローガン。
Always Say YES!
Kタワーのフロア構成。
1階に様々な機能があり、
2階は手術センター。
年間に8000回の手術が行われる。
3階は総合周産期母子医療センター。
4階・5回は女性専用フロア、
6階から11階が一般病床、
そして12階がエグゼクティブフロア。
13階はレストランフロア。
面会カードは2種類ある。
サポーター・タイプとビジター・タイプ。
カードはコンシェルジュやインフォメーションセンターでもらえる。
とりわけサポーター・カードには、
ICチップが搭載されていて、
24時間体制で入退室が可能となっている。
女性フロアはピンク色の基調で落ち着いている。
3階の周産期センターの病室。
この部屋で出産し、そのまま短期入院する。
様々な機器は扉のなかにしまわれていて、
外からは見えない。
できるだけ日常生活の感覚を保つため。
扉を開けると機器が出てくる。
シャワールームも、
ビジネスホテルの水準を維持している。
もちろん洗面所、トイレも。
部屋の入口に個人名はない。
個人情報とプライバシーの尊重。
ベッドサイドには2002年から、
モニターがしつらえられた。
患者への情報提供のためだ。
患者は自らカルテを見ることができる。
それ以外にもタッチパネル方式で、
買い物代行、食事確認、見舞客の食事注文メニューなど、
14種類の機能を持つ。
個室のソファーは、
伸ばすとベッドになる。
いつでも介護者が泊まったり、休んだりできる。
3階の周産期母子医療センターの新生児集中治療室。
未熟児・新生児専用の集中治療室。
治療中の自分の赤ちゃんを見ることができるモニターシステムもある。
1階にはタリーズが入っている。
病院というと消毒液のにおいが強いが、
コーヒーショップが入っていると、
その香りがして、日常を感じさせる。
1階には「患者さま情報プラザ・プラタナス」がある。
患者は自分の病気を自分で知り、学ぶことができる。
プラタナスには看護師が常駐し、
パソコンに入った自分のカルテを一緒に見て、
相談に乗ってくれる。
プラタナスの隣にショップ。
特に女性入院者は買い物がしたいという。
そのニーズにこたえるために、充実した品ぞろえ。
1階にはフラワーショップも入店している。
13階のレストランフロア。
エレベーターをあがると中庭があって、
オーシャンビューを楽しめる。
窓の外は太平洋。
レストランは、入院患者が来客をもてなせるような快適なレベル。
右側はオーシャンビューを楽しめるカウンター席。
奥に入ると、一流レストラン仕様。
立教大学大学院結城ゼミは、
予約して個室をとってもらった。
個室からも見事なオーシャンビュー。
亀田メディカルセンター視察組で写真。
亀楽亭と名付けられたレストランは直営。
メニューも豊富で、
すべての料理にカロリー表示がある。
しかし味に手は抜かれていない。
海鮮丼。
器も凝りに凝っている。
スパゲティミートソース。
このフロアにはケーキショップがある。
そしてラウンジ。
ラウンジの一角には、
ちょっと前までバーがあった。
ピアノの生演奏があり、
営業時間はなんと午前4時までだった。
しかし一部患者のたまり場になったり、
客数が少なかったりで、
現在は閉鎖。
しかし亀田病院の「患者さま」満足追求のエピソードとして、
面白い。
そしてこの話のハイライト。
レストランとは仕切られて、
別のエレベーターでしか上がれないが、
13階にはもう一つのスペースがある。
シックな通路。
そして霊安室。
通常の病院は、
霊安室を地下に持ってくることが多い。
その代り最上階には院長室があったりする。
しかし亀田メディカルセンターの場合、
天国に一番近い最上13階に霊安室 が3室ある。
一番奥の広い部屋。
オーシャンビューの前に櫃台。
医療の成果物は「死」である。
だから亀田はプロセスを大切にする。
最後のプロセスがこの霊安室。
この病院で亡くなったご遺体はみな、
このオーシャンビューの霊安室に安置される。
医療機関として最新の機能を有する亀田メディカルセンター。
その医療サービス機関が、
ホスピタリティのマインドを、
隅々まで定着させようとしている。
看護スタッフご意見箱。
隅々までいきわたらせるために、
マネジメント・システムの工夫に挑戦し続ける。
さらに将来投資も着々と進む。
A棟の新設が進む。
ご案内くださった島原さんと写真。
そして結城ゼミの面々の満足顔。
医療機関としてのマーケティングとイノベーション。
亀田メディカルセンターの試みは、
すべてのビジネスを元気づけてくれる。
医療機関は儲けようと思えば、
いくらでも儲かる。
しかしそれよりも大切なことがある。
「イノベーションとは、
つまるところ、
社会の変革である」
ピーター・ドラッカー先生の言葉が響いてくる。
(by yuuki)
<この稿は、結城義晴の毎日更新宣言から一部転用しました>