「食品スーパーの業務システム」2008年5月度報告前編
2008年5月23日、商業界会館2階にて、下記の内容で行われました。
〔1〕食品スーパーの業務システム
岸本徹也氏(東北文化学園大学)
昨年、スーパー70社アンケートおよび分析を発表していただきました。
スーパーマーケット各社を、
グループ①「個店対応型」
グループ②「競争価格追及型」
グループ③「バランス志向型」
グループ④「高質志向型」
の4つに整理することで、
各社は、自社をどのグループにポジションを置いているか、
どの程度認識しているか、
その戦略が店づくり、MD、人材開発・処遇に、
どのような差異を及ぼしているか、
営業効率にどの程度反映されているか、
これらを検証するものでした(結果報告は食品商業4月号を閲覧ください)。
以上を踏まえ、今回は主に、
食品スーパーが業務システムをどのようにとらえてきたのか、
といった視点で下記の項目で解説いただきました。
(1)流通業研究史
“流通業そのもの”ではなく、
“流通業がどのように、知識や情報を獲得し、業務システムの形成に役立ててきたか”という研究史です。
米国チェーン紹介型による初期SM論、
田島義博氏、林周三氏から現在の矢作敏行氏に至る流通革命論、
安土敏氏による日本型SM論、
また”小から大へのビッグストアづくり”を掲げ、
大量販売に象徴されるマスMD論を展開することで、
双方に包括的な影響を見せた渥美俊一氏のチェーンストア理論を整理しました。
その後、M.ポーターに象徴されるポジショニング論ではなく、
内部資源の生成と活用にあるとし、人材育成と業務システムの確立を挙げました。
(2)業務システムの生成
①「対顧客」
②「(取引先など)組織間」
③「組織内調整」に分ける中で、
①はCSおよびマーケティング論、
②SCMなど組織間、システムの研究はされているが、
③については店舗開発のような「業態開発論」以外見当たらないということ、
また①②にしても背景となる商物流と店頭との関連性の研究がないこと。
そこで、サミットの生鮮システムについての
観察および分析レポートが提示されました。
設計側の本部(作)と実施する店舗(演)それぞれが、
高い能力で維持されていることが前提なのですが、
「チェーン本部主義」「個店主義」に割れた意見交換がされました。
この場合の主義は、予算策定および仕入・改廃から売価決定など、
どこまで店舗に移譲されているかが焦点になりました。
ユニーの場合、初期は、
店長に大幅な権限が持たされていて「個店対応」が機能したが、
50店舗体制になるころは、本部主導になっていたこと、
また100店舗になる中で、再び「個店主義」を打ち出したこと。
また、埼玉県に拠点を置く10店未満のスーパーチェーンでは、
各々独自の仕入れ態勢を組むことで、機動的な店舗運営を行っているが、
チェーンシステムの確立をする時期に来ている意見もありました。
企業間で分けるというだけでなく、
同じ企業の中でも成長過程の中で、
「個店主義」を必要とする段階、
「本部主義」を確立する段階があることが感じられました。
ただし、対顧客については企業規模を問わず「個店主義」が望ましく、
大きな枠組みなどの設計は「本部主義」と分けるのが相応しいとのコンセンサスを得ました。
<5月後編の報告に続く>