米国スーパーマーケット趨勢 6月度RMLC報告
2008年6月26日、商業界会館2階にて、商業経営問題研究会が開催されました。
第一部は、米国研修から帰国したばかりの結城義晴座長のレクチャー。
〔1〕米国スーパーマーケットの趨勢
<米国の近況>
米国チェーンストア四半世紀のランキング推移を踏まえ、
かつて1980年代はGMS、SMフォーマット中心だった。
現在(2008年)はスーパーセンターのウォルマート、Hホームセンターのホームデポ、
ドラッグストアのCVSケアマーク、SスーパーマーケットのKrogerといった、
各フォーマットの代表格によるランキング寡占化の傾向があること。
同時にフォーマットにはバラエティ化の進展が見られること。
しかも各フォーマットともトップ企業と2番手企業に絞り込まれつつあること。
これを複占化と呼ぶとの解説がありました。
また、テキサス州(オースティン)、ネバダ州(ラスベガス)などの郊外では、
車で10~15分圏ごとに、SM、HC、DS(またはSUC)などの集積が見られるようになったこと。
デベロッパー主導によるSC開発または計画的なフォーマットミックスなどが進んでいること、
など出店傾向を整理して頂きました。
<2008年の動向>
先に訪れたFMIにおいて、同協会ティモシー・ハモンズ会長との意見交換の中で、
2007年度は、業界全体は過去最高水準の業績を弾いたものの、
引き続きサブプライムローン問題の影響から、
ガソリン高により、不況感が深刻になりつつあり、
低価格化への高いニーズおよびPBの存在感が際立ってくる、
日本におけるトップバリュ、セブンプレミアムなどのPBニーズの上昇にも、
同様の背景があることが確認されたとのことです。
また、考え方によっては、NBとは「ナショナルブランドメーカーによる製造物」ではなく、
「国民的な支持を得たナンバーワンブランド」といった解釈にもなる。
こんな大胆な解説もなされました。
<米国のSMが取るべき4つの道>
上記については、今後のSMは①巨大化
②低価格化
③ニッチ
④消えていく、
4つの道しか選択肢がなく、
とりわけ③をどのようにとらえていくかが、
SMの経営戦略上の問題であるとの指摘がされました。
ニッチ=NICHEとは“重箱の隅”的な意味ではなく、
“壁のくぼみ”などの、本来あるべき正しいポジションに位置付けられる、の意味です。
<小型店問題>
昨秋、米国進出を開始したテスコの「FRESH&EASY」の近況と今後の可能性について、
ウォルマート「NeighbourHoodMarket」などと対比しつつ、
写真を交えた解説がされました。
一部の地域で、両社のガチンコ対決が見られており、
停滞しつつも若干の改善が見られる「NHM」と、
オーガニックやケーキなどのオリジナル商材による差別化を行う「F&E」の戦いは、
新規参入店とこれを受ける先発地域一番店の頑張りによって、
周囲の店舗がダメージを受けるという激戦地域のある種のパターンを見せていること。
また、「F&E」の商品構成は、
ALDI(LIMITED ASORTMENT STORE)とTRADERJOE(Natural SM)の中間のようなもので、
米国の空白フォーマットではないか、としつつも、
小型店の持つ、客数の少なさが、生鮮食品の低回転として、効率の足を引っ張ることになること、
また英国におけるストアロイヤルティがないために、
主力のPBが力を発揮できず、NBなどの価格訴求での集客を必要とするなど現段階での課題山積ぶりを、
まとめていただきました。
ただし、目下、商圏人口10万人規模のSUC約2500店を擁し、
数値上は飽和に達しつつあるウォルマートにしても、
商圏を絞り込んだフォーマット(小型店)開発は課題となっており、
その端緒として、「Market Side」開発が進んでいることが明らかにされました。
マーケットの選定、カテゴリーの持ち方など小型店開発の難しさを、
今後、これらの先端小売業がどのように解決していくかを注視していくかが、
座長を中心とした論議の中心となりそうです。
(事務局)
<6月度後半は、品川昭さんのご報告です。品川さんのレクチャーへ続きます>