RMLC2009年3月度報告
3月度のRMLCでは、結城座長に引き続き、
品川昭氏(品川エコ・エコノミー研究所)より、SMの競争力についての考察がありました。
「百年に一度の不況下にみるSMの競争力」(品川氏)
「SMの競争力」が本研究会の基調テーマですが、
百年に一度の不況という中では、マネジメント、マーケティングに代表される「経営学」だけでなく、
「経済学」「社会学」「歴史学」といったような角度から見ることもできると思います。
競争力を考えるに際し、同業の店対店を起点とするなら、
「店づくり」、「地域・都市間」、
(SM対GMS、対CVS、対VS)異業態、
(外食、ファストフード、ネット販売)異業種との競争へと段階ができています。
さらに産業・消費・金融構造にも視点を向けなければならないでしょう。
特に今は、産業構造レベルでの地殻変動が起きているだけに見ておかなければならない。
金融ショックの発信地である米国も、消費経済の実態をみると、
54,453ドルの年収に対し、43,395ドルの支出となっています。
低所得者層(低位20%)では9,168ドルの収入に対し、17,837ドルの支出、
中低位層20%でも24,102ドルの収入に対し、
27,410ドルの消費と計4割の人が支出過多になっています。
過剰な消費に支えられている経済であることを見ておく必要があります。
続いて、参加者との意見交換がなされました。その中から代表的な質疑を報告します。
杉田氏
小売業の業態開発のプロセスを振り返ると、
「不況を契機として出てくる」と「時代を先取る形で計画、提示、革新を重ねる」の2つの側面があると思います。
これは「外的」(つまり環境に対応する)「内的(経営者自身による革新)」とも置き換えられるのではないでしょうか。
結城座長
小売業の場合、最終消費者に近いという点で前者(環境変化)の影響を受けることが多いのではないかと考えます。
とはいえ、マーケットの要素も大きいと思います。
そして、そこに着目する経営者の視点、資質ということになります。
「外的環境」「経営者の資質」のどちらかで決まるといっては、「経営学」というものが成立しないのですが。
ゴドフリー・M・レブハー氏が「チェーンストア~米国百年史」のなかでは、
チェーンストアの成長要因として、
①チェーンストア方式に内在するもの
②経営者の資質
③弾力性
④仲間(同業者など)との効果的な団体活動、
の4つを挙げています。
米っく在住のロバート鈴木さんのご指摘ですが、
マーケットの面で言うと、米国では、
物事を「In」(好ましい)と「Out」(好ましくない)に分けて語るというトレンドがあるそうです。
今の時代、公共交通機関の利用や水道水を飲むなどの生活が志向されており、これは「In」、
逆に新車購入やペットボトルなどは「Out」といったようなもの。
企業目的を「使命」におくとするなら、
「健康で安全な“食品を提供”する」ことに焦点を絞り、
こうした社会的な責任を果たせるビジネスモデルとは何かを考えなければなりません。
今、話題の「ロープライス」や「コンビニエンス」も政策として、
原動力の一つに持たなければなりませんが、それ自体目的とはなりえなません。
3月度は20名の参加者が集まり、活発な議論がなされたことを報告します。
月刊「食品商業」編集長 山本恭広