RMLC2009年5月度報告
業態の盛衰 井口征昭氏
RMLC5月の会合は、19日13時30分より港区芝の機械振興会館で開催。
13名が参加。
今月は、井口征昭氏が「業態の変遷」をパワーポイントを使い解説された。
(1)商業統計に見る業態の変遷
①販売額の業態別推移
・商業統計では、商業販売額のピーク(平成9年)に迎えていた。
・同時期に総合スーパーも9兆9570億円でピーク。
・百貨店は平成3年に既に11兆3500億円でピークを迎えていた。
・食品スーパーは、現在まで17兆円前後で増減中、ドラッグストアは平成19年3兆130億円でまだ成長中。
②店舗の業態別推移
・店舗数でみると百貨店のピークは平成3年(478店)、総合スーパーは平成6年(2159店)、食品スーパーは平成11年に1万8700店でピークとなった。
・総店舗113万店のうち、専門店(69万店)、中心店(29万店)が高い構成比を示しており、
・店数の限りでは、大型店の寡占化は進んでいないように見える。
*経済産業省における「業態」定義
食料品スーパー(売場面積250㎡以上。食品比率70%以上)、食料品専門店(同90%以上)、食料品中心店(同50%以上)*衣料、住居とも同じ
以上を踏まえ、井口氏が「総合」の成長と衰退のヒントを探っていく。
(2)小売り業態理論
①3つの理論
1.分散と集積
2.小売の輪
3.アコーディオン理論(零細小売業→百貨店→GMS・SM→専門スーパー→SC)
②所得に見る消費環境
・ピークをみると、世帯の所得は2000年にピーク。
・国民総生産(1970年188兆円⇒2007年561兆円)
・国民所得(1970年59兆円⇒2007年376兆円)
・雇用者報酬(1970年32兆円⇒75年82兆円⇒80年130兆円⇒90年227兆円⇒2000年271兆円⇒2007年265兆円)
・企業所得(1970年22兆円⇒2007年128兆円)
③家計消費支出の推移
・世帯当たり支出は1993年がピーク、以降95年比で2007年90%まで減少。
・モノ消費(衣食住)70年から07年で300% *チェーンストア産業の努力の成果
・コト消費(教養・教育)は同450%の伸び
・公共費(水光熱費、交通・通信、医療保険)は同600%
④マーケットの変化
・70年代 大量消費(生産者主導、標準化・均質化の追求、量販店の成長基盤形成)
・80年代 商品の質(ターゲット・エリアマーケティング)
・90年代 消費の成熟(ラグジュアリー専門店)
・2000年代 価値観での消費(SPAとカルチャー)
(3)業態別特徴と主要チェーンの特徴(売上構成比、顧客層、商圏からとらえる)
①理念
・百貨店=ファッション・くらし創造、総合スーパー=まちづくり・EDLPといったようにフォーマットの主張が見える
・SM…ヤオコー(エポックメーキングとなった南古谷SCは、構造はNSCだが、専門店の集積で擬似GMS形成。デイリーからホリデーまでカバー)、サミット(店の近所の、日常の食生活のお手伝い)
・コンビニ…ローソン(ほっとステーション、開いててよかった)
百貨店、総合スーパー、SM、コンビニの4つの象限が、専門店ビル、RSC(ライフスタイル提案専門店と専門スーパーの集積)、NSC(日常生活に必要な商品を扱う専門スーパーの集積)、通信販売へと転換
②売上構成
・百貨店51.2%、量販店(イズミ)18.6%、コンビニ(家庭用品含み)26.3%
*生活の緊急需要に応えることから一定の品揃えの確保が見られる。
・通販3兆8000億円、いずれ百貨店、総合スーパーを抜く。
③顧客層
・百貨店…カード顧客の属性をみても、西武百貨店は30歳代、そごうは50歳代と分かれており、世代別に独自のライフスタイルを持つ
・量販店…標準世帯を対象にしている
④人口動態
・80年、35歳と5歳に山を迎え、量販店の客層となる。2000年、30歳と55歳に山
*以降、マーケットのボリュームとなる山が続かなかった(少子化の始まり)
・家のローンと子育てを終えた団塊世代と親元に近くに住み支援を受ける30歳代が“現代の豊かさ”の正体
⑤商圏
・SM、500mが重要。生鮮食品の回転確保
⑥購買の仕方
・百貨店=こだわり、スーパー=生活に必要、通販=興味)
・商品開発(百貨店=探し出す“点”限定品、スーパー=つくる“線”価格・健康・グルメ志向)
⑦店舗展開
・専門店…プレステージは限定した場所
・カジュアル・紳士・ベビーは良品計画328店からユニクロ749店、しまむら1111店
上記のトップチェーンに競合企業を加えると「専門(衣料品)スーパー」4000店になる。
(4)日本の小売業の今後
グローバリゼーションと国外移転が進む中で、低価格および低経費追求は必須であり、そのための調達力が課題となる。
そこで業態別の課題でみると。
百貨店
筆者(注・井口氏)の経験則であるが、1店当たり年商が100億円以上ないと百貨店本来の品揃えと店揃えができない。
集客の目玉となる海外人気ブランドを集積させるには300~400億円は必要。
三越の場合、仙台390億円、札幌380億円とかろうじて維持する水準。千葉、高松クラス(約270億円)は厳しい。イオンと共同出店した郊外型の武蔵村山、名取は厳しいことは明白(デパ地下の食品はもう少し商圏は絞れる)。
百貨店の場合、取引先(出店企業)は規模ではなく、個店でしかみてくれない。
総合スーパー
1.「標準家庭」の減少
2.専門スーパーの侵食
3.食品はSMのみ残る
4.総合スーパーの2階以上は専門店誘致
5.箱型GMSとイオンSCでは優劣明らか
スーパーマーケット(SM)
SM+GMS(食品フロア)で現行の2万店がピークであるが、内食回帰が追い風である上、これだけの店数はインフラとして残る。
高齢化の消費傾向
60歳以上の特殊な消費傾向に注目したい。
例えば、「贈与金」2万2635円(3万円強の“交際費”に含まれる)、「自動車関連」3905円。いずれも34歳以下(贈与金4851円、自動車13483円)、35~59歳(同6091円、20112円)と顕著な違いがあり、ここをみてもGMS成長の糧であった団塊世代の消費が一変していることが分かる。
「食品商業」編集長 山本恭広
井口氏の分析とその報告の後に、参加者からの質疑応答がなされました。
その模様は次回ブログで報告…商人舎事務局