RMLC2009年5月度報告―質疑応答
井口氏の「業態の盛衰」報告―その後の質疑報告
井口氏の問題提起を受け、百貨店業態の今後について、主に議論されました。
<村上篤三郎さん>
百貨店、GMSはどうなるか。特に百貨店は、統合・合併などで分化が著しい。
GMSも業態として括るのではなく、固有の企業の生き方と戦略を個々に見る必要がある。
<高木和成さん>
SCにおける中核テナントとして位置づけるとGMSの位置づけも生き方も変わる。
<結城座長>
業種⇔業態と対比的に、「百貨店」から「コンビニエンスストア」が業態といわれるが、
業態をさらに進んだものとして、フォーマットと位置づけている。
業態のライフサイクルを整理する必要がある。
米国では、A&P食品は食品のチェーンとして、JCペニーは衣料品中心のチェーンとして成長したが、
利便性高めるために住居関連など揃え始めた。
食品と非食品発祥の企業はそれぞれ別の成長の仕方をしてきた。
日本のGMSが模範としたKマートも、ウォルマート、ターゲットが侵食していったが、その出自が分かりやすい。
「業態の盛衰」以外にも、同じ時期に「小売業態の誕生と革新」(中田信哉著 白桃書房)が出ており、
アカデミズムの世界でも業態に関する関心が高まっている。
今回のベースとなった商業統計も昭和51年から業態別統計が取られた。
その後、平成11年から商業統計にドラッグストアが加えられた。
しかし食品スーパーマーケットの項目がない。最も影響力のある業態にも関わらずだ。
今、業態の整理が求められている。
まずは業態=店舗(営業、組み合わせの形態)としたほうが理解しやすい。
<品川昭さん>
実は西友が全盛の時代からGMSが悪いといわれていた。
“G(ジェネラル)”という特徴のない概念が悪いのか。
一方で、地方ではスーパーセンターのように、生活すべてをカバーするといって、
仏具から車まで消費頻度が低いものまで品揃えしている。
コモディティストアとはいえ、消耗頻度・購買頻度が低く、専門店の品揃えまで取り込んでいる。
<杉田幸夫さん>
その店が置かれた商業環境と相対的に見る必要がある。
商業過疎の地域においては何でも揃えても支持される。
GMSの場合、組織内部にも問題がある。
例えば人事開発をみても専門店に対抗できる品質のバイヤーがどこまで育てられるか。
一品当たりの費用対効果も専門店にかなわない。
<井口征昭さん>
専門スーパーは、専門分野についての品揃え、低価格訴求。
専門店はラグジュアリー。
百貨店は自前ではMDできない。業態というよりも「小売商業施設」。
そんな業態がなぜSCつくったか。
九州でのイズミ見たとき、勝てないと思った。分類と現実に出てくる店の形は違ってくる。
<杉田さん>
アソートメント面で見ると、個々のMDというよりも専門店アソートメントといっていい。
<山口紀生さん>
百貨店生き残りの水準である“100億円”以上の80店舗がこれからも残るというが、
自社MDができないのでは、そんなに残るのは考えられない。GMSはだめでも自社で仕入れて売っている。
<品川さん>
しかし、百貨店は、これまで外部仕入れ(委託)の活用が成長の原動力であった。
<高木さん>
そもそも現在の自分たちの消費場面で果たして百貨店は利用しているだろうか。
<臼井さん>
しかし、百貨店の持つMDのグレードとクオリティはやはり違う。
本当に必要なもの、大事なものに対する価値観がある以上、
それなりのグレード、クオリティを持つ限り、専門店だけでなく、百貨店、または通販に向かうだろう。
<結城座長>
百貨店は100万人商圏(「業態の盛衰」では50万人商圏)と考えると120店舗は計算上、残る。
英国で有名なハロッズは単独店である。マークス&スペンサーのような店数だけでない百貨店として生き方もある。
だから基本フォーマットに加え、その店の持つポジショニングが重要。
その企業の特徴を示す「バナー」という概念である。
それは、5つの違いから成り立つ。
①店づくり、レイアウト、内装・照明の差異性
②売り方、商品設計の差異性
③コミュニケーション
④プロモーション
⑤ノン・ファンクショナル・ベネフィット[パーソナリティ・イメージ]
こう考えると、統合、閉鎖して、経営効率を上げることだけが、残り方ではないと思う。
<高木さん>
百貨店も業態分化している。ごちゃまぜになっている(大型、小型といった分け方あるが)。
<杉田さん>
江戸時代から続いているような構造と歴史から、経費面から考えると存続は難しくない。
とはいえ、新たな開発は考えにくい。
<結城座長>
百貨店の場合、残存者利益を享受する形での存続はできる。
ただし、新たな立地、特に郊外での出店で成功は難しい。
「食品商業」編集長 山本恭広