RMLC2009年4月度報告
4月度は、前回より、メンバー入りされた中村徹さんに問題提起をしてもらいました。
(1)EDLPブームの“根拠”を検証する
EDLPとEDLCの関係…中村徹氏
中村さんには、イオン在籍中、主にデイリー食品の分野で、
開発および調達業務を10年以上積まれた経験を踏まえて語っていただきました。
GMS中心に行われている値下げ競争の背景と現状については、
「仕入原価の引き下げや仕組みを伴っておらず、“ノーガード”状態」とし、
実はバイヤーも、売場担当者も、
商品コストを知らない中で仕事をしているのが、大半であると指摘されました。
商品を仕入れる際、「製造」「物流」「決済」などの各段階で
さまざまなコスト改善の余地があるはずで、
原価構造と取引構造から見なければならないというもの。
この面でのコスト引き下げが恒常的なローコスト化(EDLC)につながり、
EDLPの前提になるはずだが、
「製造・物流コスト」はブラックボックスの状態。
従って、EDLCとなると「人件費」の引き下げにしか目がいかない。
コスト引き下げ対象の項目についても、
取引メーカーとの商談・交渉の材料として、一覧表化されたものを提示していただきました。
「伝票」「受発注」「返品(の有無)」それぞれにコストを明らかにしつつ、
商品別、取引先別の収益を考慮しないと有効性が分からないというもの。
EDLCとは作り手のローコスト化を図ることでもあり、
製造ラインの稼働及びサイクルを把握しておくと、
その平準化のタイミングを知ることで、調達コストは引き下げられる。
これが恒常化できると定期的な特売用アイテムの調達にもつながるということでした。
一つの豆腐メーカー、卵メーカーに対して、
競合他社と日替わりで調達し合うということも行われているという、参加者の声もありました。
続いて、高木和成さんより、毎月発信されている「RMO通信」より、
「改正薬事法」対策ついての現状について、解説いただきました。
(2)改正薬事法対策について…高木和成氏
ファミリーマート300店、セブン&アイ(アインファーマシーとの提携)、
イオン(グローウェルHD、CFSコーポレーションとの提携)といったように
ドラッグ事業の青写真と主要業態・チェーンの取り組みの方向が見えてきた。
併せて医薬品販売の制度化に伴い、創設された
「登録販売者」の合格者が5万8000人にのぼっていることや、
川上段階でも医薬品、OTCにおけるPB開発が予想されること。
これに併せて、主戦場をフォーマットとするドラッグストアも
安さ訴求型と付加価値型の二極化に分かれることが予想される。
以上を受けて、大塚さん(ヤオコー。ドラッグ事業の縮小)からは、
食品スーパーでみると、現状、構成比5%にとどまる非食品の中で、
さらに医薬品となるとマーケットは絞り込まれ、
担当者の育成を考えるとコストパフォーマンスは低い。
また、売る場所が増える、どこでも買えるようになると、
コモディティ化するわけで、価格競争になる。
そういうカテゴリーは規模のメリットが今後も働くことになり、
取り組みの動機にはならない、との意見が出されました。
ただし、部分的に導入すると人件費などで赤字化してしまうが、
本格的に、ドラッグを軸に新しいフォーマット開発など
事業構造を変えるつもりで取り組むと
食品スーパーの現状のビジネスモデルを変えるきっかけになる。
こう考えると、食品スーパーだけでなく、
ホームセンター、バラエティストアでも自前でやることによる
事業化の可能性は完全に否定できないという意見にまとまりました。
「食品商業」編集長 山本恭広