「蛻変(ぜいへん)のすすめ」(結城座長)2009年3月度報告
結城座長より商人舎HPにて、
RMLC、コンピュータリテラシー研究会、エコストア研究会など、
各種研究会の公開サイト、ブログを立ち上げていることの報告がありました。
また、米国セミナーより前日に帰国されたばかりだったこともあり、
07年11月より始まった英国テスコの米国進出の現状について報告がなされました。
テスコのフレッシュ&イージーは、店舗面積288坪(売場面積250坪)を基本モデルとし、
現在130店舗の布陣になっていること。
また、セーフウェイの「THE MARKET」、
ウォルマートの「MARKETSIDE」といった既存チェーンでも中小型店の開発が進んでいること。
この規模では、トレーダージョーが圧倒的な強さを持っており、
フォーマットをともにした戦いが始まりつつあることを示唆されました。
今年最初の研究会であることもあって、結城座長より、
2009年の流通業の抱える課題と行動提起を語ってもらいました。
「蛻変(ぜいへん)のすすめ」(結城座長)
年ごと、月ごとの標語をブログで発信していますが、
今年、特に強調している標語として掲げているものです。
生態変化は、自然環境の変化の下、本能的に行われるものですが、
企業は外的・社会的環境の下で、意識的・意図的に変化を行わなければならない、
この意を込めてのものです。
商業統計をもとに業態別推移を見ると、
1991年から07年の間を見るだけで、各業態のピークが見えてきます。
大型スーパーは97年、ホームセンターは02年、
衣料スーパーとコンビニは07年にピークを迎えています。
各業態にとっての蛻変のタイミングが分かります。
目を転じ、ウォルマートを見てみますと
88年にスーパーセンター、
98年にネイバーフッドマーケット、
08年にマーケットサイドをスタートさせており、
同社にとって、蛻変のタイミングを重視してきたと見ることもできます。
販促のキャッチコピーにしても、
「ALWAYS LOW PRICE」から「SAVE MONEY LIVE BETTER」「UNBEATABLE」といったように、
顧客心理を突くキャッチフレーズづくりが巧みです。
コーネル大学におけるスーパーマーケット論では、
「価格」(PRICE)の高低を縦軸に、
「品揃え」(ASSORTMENT)の幅を横軸にとったマトリックス内で、
フォーマットを“4つの象限”に分類するやり方があります。
今話題のハードディスカウントは「LOW PRICE&NARROW ASSORTMENT」、
コンビニは「HIGH PRICE&NARROW ASSORTMENT」に位置づけられるというものです。
この象限ではSMは中間に位置づけられています。
(中間といっても、SMの領域はそんなに広いとは思えない、という意見を受けて)
セルフ業態の変遷をみると、消費者の生活水準の向上に合わせて、
「コモディティ」から「高質化」へと幅が出てきました。
とはいえ、生活水準の向上に、経営水準が追いついていないのか、
日本の総合スーパーは、こうした広がりに追いついておらず、
衣料、住関連を縮小させ、今では食品しか残らない状況になっています。
各社のディスカウントフォーマットの前提に、
グローバリゼーションがあるといえます。
MITのバーガー教授によると、グローバリゼーションには
①コントロール不能
②(時間と空間を超越させる)IT
③後進国の技術力向上と活用、の3つが特徴付けられています。
特に③は、仕事のモジュール化が必要であり、後進国の生活水準向上を招きますが、
本来の製造拠点であった(わが国のような地域の空洞化を起こす)スーパーマーケットにとっても、
何を主力とするのかを見るべきだと考えます。
蛻変をするためには、イノベーションが必要です。
イノベーションは何によって起きるのかを順位づけしたものが以下です。
①予期せぬもの(数多くの試行錯誤が必要)
②負のニーズ
③顕在化したニーズ
④産業構造の変化
⑤人口動態の変化
⑥認識の変化
⑦発明・発見
発明や発見といった技術革新よりも、
多くの試行錯誤からイノベーションが生まているということに注目したいと思います。
以上が結城座長の提言でした。
「食品商業」編集長 山本恭広