スーパーマーケットの競争力強化の視点 vol.4
第4回 週間販促計画にみる効率的な組織運用Ⅱ
ラインアップと売価が書き込まれたチラシ(案)は、週間販促会議に提示される。
この会議には、本部側から販促部、商品部のマネージャー、店舗側からは、店舗運営部長、スーパーバイザー代表及び、店長代表などが出席する。
この会議では、出席者は再び、自分が責任を負う予算の見地から発言し、調整の上、販促計画は決定される。
調整に当たっては、商品部から、店舗側に対し、必要に応じて、エンド陳列、試食販売、調理法のパンフレット配布などの販売技法についての意見が述べられる。
販促部からは、お客の最近のライフスタイル性向などについて述べられるであろう。
優れた組織計画のもとでは、さらに整正が行われる。
ラインアップで示される配促アイテムの数量は、店舗の部門チーフが商品部に連絡する。商品部ではそれらを集計し、バイヤーが納入業者に発注する。
チーフはアイテムの数量を、店内販促会議で、店長と協議の上、決める。
数量決定に際しては、販売方法の工夫が議論される。
また、バイヤーは、発注量が足りない場合、店舗に増量を要求し、ここでも、必要な調整が行われる。
以上のように、販促計画は、2月余りの時間をかけ、いくつものプロセスで練りあげられて、実施されるので成果が上る。
これも組織力の成果である。
■レビューによる改善課題の発見とそのみ重ねの重要さ
しかし、組織計画には、さらなる成果が期待できることを指摘しておきたい。
その期待とは、レビューがしやすく、効果的に行えるということである。
いかによく練られた計画でも、もともと極めて不確実の高い小売業の営業成果は、常に目標達成が続くものではない。全社的にも、部内別にも、特に店別部内別には目標対実績の間には差異が発生する。
差異にはプラス差異、マイナス差異があり差引0(ゼロ)に近くなることもある。
こんなケースで、マアマアだったと安心するのが最悪である。改善が全く進まないからである。
レビューに当たっては差異を確認し、差異の発生した原因を究明し、必要な改善課題を発見することが最終目標となる。
プロセスモデルが精緻であると、問題の所在を客観的に討議しやすくなる。
逆の場合には、問題の所在がわかりにくいので、いきなり、いわゆる、犯人探しを始め、「誰が悪い」となり、多くの場合、「他部門、ないしは、他人が悪い」と決めつけたがる。
犯人探しはお互いに、攻撃、言い訳、すり替えの繰り返しの不毛の議論に終止し、信頼関係を破壊する。
具体的な改善課題の解決を組み重ねるうちに、個人の能力開発(OJT)が進み、組織的には弾力性、協調性が高まる。言い換えれば、信頼関係が高まるので、より風通しのよい、コミュニケーションが行われるようになる。
組織能力の判断基準に、課題に対する意思統一の程度、協業度、目標達成意欲の3つをあげる説があるが、その基盤には、課題発見のしやすい精緻なプロセスモデルが繰り返しあることが前提となる。
■■岡田、オシム両監督のチームづくり
余談にかわるが、昨年から、サッカーや野球のテレビ放送で、試合後の監督やプレーヤーとのインタビューで、「新しい課題が見つかったか」と聞く場面が増えている。
また、先日もサッカーの日本代表の岡田監督が、ワールドカップ地域予選オーストラリア戦を前にして、インタビューに答えて「オーストラリアは極めて手ごわい。今、我々は、この手ごわいチームに勝つべく、いくつかのコンセプトを生かすべく、選手ともども練習を積んでいる」と、述べていた。
さらに、全日本の前オシム監督が「私の仕事は、プレーヤーにプレーの仕方を教えるのではなく、何をするべきかを考えさせ、チーム全体として、それらをまとめさせることだ」と、度々言っていたことを思い出した。
これらの考え方が、スポーツの世界でもチーム力を強化しているのであろう。
SM産業でも、成長期および成熟期初期までは、ワンマン型リーダーシップが効果的であったことは否めない。
しかし現在は、企業規模も大きくなり、課題が山積し、しかも、市場が変化し続ける時代である。いかに優れたワンマンといえども細部までは目がとどかない。
組織力で問題解決を積み重ねるという調整能力を、組織において育てざるを得なくなっているのである。