スーパーマーケットの競争力強化の視点 vol. 6
第6回 組織の変容
■うちの会社では、まだ無理
現在、競争面で、多少劣位に甘んじているSMで、まま見られることであるが、少し複雑、かつ、レベルの高い改革提案に接すると、「うちの会社では、まだ無理」という声が聞かれる。
無理な理由としては、マンパワーの質・量の不足、改革課題をサポートする関連サブシステムの未整備などがあげられる。
さらには、賛成者が少ない、協力が得られないなどの理由もつけ加えられる。
協力が得られないのでは、課題は成功するはずがないので、改革案は没ということになる。
しかし、こんな決定を続けていても良いのか。
劣位から脱することはできないに止まらず、企業の存続すら危うくなる。
開発・改善プロジェクトの決定に際しては、まず、有効性、必要性の見直し、他プロジェクトとの優先順位を検討する必要もあろう。
困難さ、コスト(時間、人的ネルギーも含む)から検討を始めて、没にするというような決定を繰り返してきたから、現在、劣位に甘んじているのではあるまいか。
特に、協力が得られない云々…を理由に挙げられる企業では、反対者を協力者に変える
ところから、改革に取り組まなければならない。
■■「なすは、なさざるに勝る」
小売業には、昔から「なすは、なさざるに勝る」という格言を遵守し、理想を求めて、空論を戦わすことを諌め、今日、明日の仕事に行を流すことを評価する気風がある。
そのため、「やれること、やりやすいことから、やれ」という意思決定が行われてきた。一歩前進すればよいというわけだ。
これは、難しいことは後回し、できればやりたくないという、気風につながる。コストを増やして、より、多くの収益を求めるという積極性にブレーキをかけてきた。
それでも、今までは、やってこられた。むしろ、健全経営と評されてきた。
しかし、SM産業も、成熟期を迎え、しばらく経過した今日、格言の解釈を変えねばならない。
いわく、「(他社のできないことを)なせるは、なさざる、なせざるに勝る」。
■■■マスタープランづくり
競争力を強化するためには、当然のことながら、多くの施策が必要である。既存の多種多様なサブシステムの再整備が必要であろう。
また、出店戦略ならびにマーチャンダイジング戦略の開発、修正。その中で、企業特性の創造、確立の課題などがある。
これらの情報をどのように処理していくかの構想をまとめて、マスタープランとし、ここの課題をプログラム化しなければならない。
まず、そのマスタープランづくりであるが、優位にあるSMは比較的、楽に進めることができる。現在、優位を占めている戦略的条件を分析し、それらの条件の中で、今後、より強化すべきもの、ならびに、今のうちに、再整備すべきサブシステムをリストアップすればよい。
また、今までは取り上げていなかった、新戦略の開発が実施できれば、優位性はさらに強化される。
これに対し、劣位企業は大変である。
現在の戦略路線の変更の必要性の有無の検討から始めなければならない。そこで、決められた路線を実施するために、既存サブシステムを整備しなおし、強化するプログラムを多数スケジュール化して、マスタープランに盛り込まなければならない。
ところで、このように苦労して作成した改革のためのマスタープランは、「難しいことは後回し」の体質が色濃く残っているSMには、全社的協力体制づくりという難題にぶつかる。
続きます