スーパーマーケットの競争力強化の視点 vol.9
第9回 企業文化
前回は、競争力強化のためには、組織改革の必要な企業があり、組織は変容することについて述べた。
組織は、企業の成長期には、規模の拡大に伴い、創業期とは別の気風に変容するが、やがて安定する。一度安定した組織の気風は、組織改革を行うとまた変容するが、これもまた安定する。
■カルチャーショック
安定した気風は、社風、組織風土などと呼ばれてきたが、昨今は、企業文化、または組織文化と呼び、専門の研究者も増えている。
文化は個人の人格形成に底知れぬ影響力をもっている。
幼いうちから、ピアノやバイオリンを習い始め、ヨーロッパに留学し、国際コンテストで入賞し、現地で演奏活動を続け、一流と認められている日本人の音楽家が、一定年齢に達すると、「やはり私は、日本人であった」と述懐するほど、日本人は、日本文化の影響を受けるものである。
高度成長期であったエピソードを一つ。
旧財閥系の銀行、商社、保険会社が共同で、リース会社を設立した。社員も3社から派遣された。創業以来、業績は、順調に伸び続けていた。
銀行の常務から転出してきたリース会社の社長は、好調な業績にも関わらず、不安を感じていた。組織がしっくり動かないのだという。
社員たちの間に、いわゆるカルチャーショックがあり、ショックが顕在化し出したのであった。
社員が出身企業別に派閥を作り、いがみ合うという気配ではないが、話がかみ合わず、活性が失われがちになったという。
話がかみ合わない原因の一つに、用語の意味が微妙に違うということがあった。
例えば、利益という言葉の意味を、商社出身者はフローの意味で使い、金融出身者はストックに重きをおいた。このほかの考え方でも、微妙な違いが多く、従業員をいらだたせた。
このエピソードで明らかなように、従業員たちは、それぞれの出身企業の企業文化を知らないうちに身につけながら、職業人としての人格を形成していたのである。
ある文化は、異質な文化に触れると、ショックを起こすものである。
カルチャーショックは、起きるものである。
このショックを放置すると、両文化の関係は悪化しがちである。憎み合うことにもなりかねない。イスラエルとイスラム諸国およびキリスト教諸国の三つ巴の関係が好例である。誰も手をつけられなくなっていている。
今後は、SM産業の中にも、合併・提携する企業が増えるかと予想されるが、カルチャーショックの兆候が現れたら、相手方を屈服させようとはせず、共生の道を模索することが必要である。そこに両者が受け入れる新しい文化が生まれる。
■■組織改革に必要な3つの文化特性
さて、ここで再び話を競争力に戻すことにする。
競争力の強いSMであるためには、どのような企業文化特性が必要か。
言葉をかえれば、組織改革に当たっては、どんな企業文化特性を目標とすべきか。
現在の企業特性に照らして考えれば、無数といえるほどの特性が考えられるが、ここでは一般的に、次の3つに要約する。
第1は、イノベーティブな課題にたずさわり、自分の役割を忠実に果たすことを楽しむ気質である。
第2は、顧客の食生活の向上に貢献するために、その実態を調べ、変化の方向を見定めようとする心構えである。
第3は、企業の期間利益目標にストイックな思考、行動を行うことである。
以下、順を追って、少し掘り下げて考えることにする。
続きます