スーパーマーケットの競争力強化の視点 vol.12
第12回 マーケティング――お客様は王様
■気まぐれな食生活者
食生活は、大勢はトレンドによって変化を続けるが、時には反流や渦巻を起したり、部分的には気まぐれな現象を起す。
欧米では、時には気まぐれを起す食生活者を、王様にたとえる。
我が国で「お客様は神様です」と言う人もいるが、キリスト教国では神様が間違えを侵したり、我がままを通そうとすることは考えられないので、絶対的な権力を握ってはいるが、気まぐれ、我がままなお客を王様と呼ぶのである。
つまり、お客様には逆らわないということである。
さて、先に述べた私の友人は、年齢は60才、2人の子供の学校教育を終えた典型的な普通の男で、年収は500万前後、外国生活の経験もない。もちろん、いわゆる食通でもないが、食いしん坊である。
日頃「高いものが美味しいのは当たり前で、安くておいしいのでなければ価値はない」などとうそぶいている。
ワインが好きになったと言っているが、その前は焼酎を愛飲していた。多分1本1000円以下の輸入品のワインで、自分の舌に合うものを見つけたのであろう。
ワインに合う食材云々とも述べたが、フランス風の食材とは限らない。
ちなみに私自身のことであるが、朝食にはトーストを食べることが多いが、トーストの前に豆腐か揚げの入った仙台味噌の味噌汁をとるのが好きである。
和洋折衷というより和洋ミックスである。
友人のワインに合った食材もまた、和洋・東洋ミックスであろう。
■■横に広がる選択肢こそ豊かさ
飽食と呼ばれるようになって久しい。
我が国の食生活は多様化が進み、変節とも言えるような好みの変化を楽しむ人間が増えている。
豊かさとはかつてのように、低額品から高額に移行することではなく、横に広がる選択肢の中から自分の好みを探し出すことに変わっている。
いわゆる貧困層を除き、昔風にいえば中間層以上の消費者は選択の自由を楽しんでいる。
そして今日の不況の中でもその意味で豊かさを求める勢いはむしろ強まっている。
豊かさを求める力が強まるということは、現状に満足できないということである。
おいしいと思った珍しい食材を日常的に入手したくなる。
また、他にもおいしい食材を探したくなる。
さらに、同じ食材でもっとおいしいものはないか、あるいは、もっとおいしく食べるための調理法はないか、しかも簡単にと、きりが無く貪欲である。
だから王様と呼ばれるのである。
再び言い換えれば、一度は気に入った店でも、変化(進歩)の乏しいマンネリ化した店にはすぐ飽きるのである。
初夏の飯能で、釣り、ゴルフ、執筆にいそしむ杉山先生。まだまだ考察は続きます。