スーパーマーケットの競争力強化の視点 vol.13
第13回 マーケティング―こだわり商品
■欲張りな王様
王様の満足は長続きしない。一度満足しても、すぐ次の欲しいものを求める。欲張りなのである。
鮮度も求めたが、冷食も求めた。安心・安全に対する欲求は特に強かった。
パスタに人気が集まると思ったら、故郷の味、次は中国はもとより韓国、台湾、マレーシア、ベトナム等々の料理・食材も欲しがる。
先にも述べたように、王様の要求は分類可能なもの、継続性のあるものもあるが、ワンタイムのもの、突然変異で出現し、後は継続するものなどさまざまである。
このような食生活の変化の中に、分類的には味に属する次のような事象がある。
それは味に対するこだわりである。
飽食の中で消費者は選択の自由を楽しんでいるうちに自分好みの味にこだわるようになってきた。そしてこだわる人が増えている。
前記のような人は、現在輸入品の特定ブランドのワインの味にこだわっている。
このワインはカルフールの後店にしか品揃えしていないので、友人は毎週20~30分のドライブをして、このワインを購買している。
■■黒田節子さんのいう「コダワリ商品」
黒田節子さんは特定のブランドないしはカテゴリーに属するアイテムの味にこだわり、多少時間をかけても、あるいは値段が高くても買われる商品を「コダワリ商品」と呼んだ。
現在「コダワリ商品」が徐々に増えつつある。
私自身は少年期には「出された食べ物は何でも感謝して食べなさい」と言う教育を受けながら育った。好き嫌いは極めて少ない。
しかし昨今は、食べられる量が少なくたって、「少し高くてもおいしいものが食べたい」と思うようになっている。また、若い頃からの釣り好きであったことも手伝って、刺身のおいしさ・鮮度にはこだわっている。
今年の冬はソイ・アイナメの刺身を食べられた毎食、楽しかった。一週間に1~2回はこんな刺身を食べたいと思っている。
しかし地元のスーパーマーケットにはこんな商材は滅多に登場しない。日替り、週替りのおいしい近海魚の刺身コーナーがあれば…と思うことがしばしばである。
また、すき焼きに入れるねぎは、下仁田ねぎが素晴らしいと思っている。下仁田ねぎが使われていないすき焼きは、私には価値が半減される。
先日、東京野菜復活のニュースをテレビで見た。
子供の頃、母に作ってもらった大根おろし、霜で葉先がチリチリになった根元の高い甘いほうれん草の味を思い出し、スーパーマーケットでも早く品揃えしてもらえないかと願っている。
味にこだわりの少ない私でもおいしさを求める。それが豊かな食生活の本質だからであろう。
人は美味しいものを食べると満足する。
また食べたくなる。
他のものでもおいしく食べたくなる。
さらにもっとおいしいもの、ないしはおいしく食べたくなる。
何をおいしいと思うかは人によって異なる。
また、病弱な人はおいしさよりは健康思考を優先させるかもしれない。若い世代では満腹感や栄養思考を優先するかもしれない。
しかし、異なる優先思考の中でもおいしさは追及されている。特に病弱な人は本人がおいしいと思わねば、元気を快復させられない。
■■■消費者が「こだわる商品」を研究せよ
スーパーマーケットはアメリカのスーパーマーケットの生い立ちの影響をあって、これまで経済性を最優先させて今日に及んでいる。
具体的には安さの追求である。
もちろん、市場主義社会では経済性は最重視すべき課題である。しかし経済性重視のあまり、効率にとらわれ過ぎ、人間に大事な他の領域、嗜好・五感性などを軽視したことを認めざるを得ない。
例えば業界指導者は品揃えの絞り込みを強調した。
ABC分析による上位品目に絞り込めというわけだ。
昭和から平成に移り変わる頃から、一部に差別化のためにはABC分析の中位・下位からもこれは育てたいと思う商品を定番化すべきだという声が上がった。
しかし、この声は異端視され、またバイヤーの「こだわり商品」にとどまった。
今回ここで取り上げる「こだわり商品」とは、消費者の「こだわる商品」で、バイヤーは「こだわり」を捨てた冷静な目で観察しなければならない。
「こだわり商品」の研究はまだ少ない。これからのスーパーマーケットのマーケティングの重要研究テーマであり、一企業の手に余る問題でもある。
しかし、消費者は自分の好みの味をデパ地下の食品売場・通販システムなどで見つけようとしている。
スーパーマーケットはスーパーマーケットの扱うべき「こだわり商品」をデパ地下・通販などを参考に模索すべきである。 スーパーマーケットの扱う「こだわり商品」には、売れ筋商品としてABC分析の上位にランクされるアイテムに育つ可能性もある。
ともあれ「こだわり商品」の育成は、今日のスーパーマーケットの競争力の主要な柱の一つで、マーケティング上の重要課題である。
続きます