スーパーマーケットの競争力強化の視点 vol.14
第14回 コンセプトの効用―「コンセプト」とは何か?
■関西スーパーの「生鮮強化」
スーパーマーケットは気まぐれ、かつ欲張りな王様の要求に応えて新しい施策を打ち出し続けねばならない。
それがマーケティングである。有効な新施策を実践する能力が競争力である。
我が国のスーパーマーケットは昭和30年代に「安さ」をスローガンに王様のお気に入りになろうとして登場した。
アメリカの成功例を見習ったのであった。
しかし生鮮3品を主なおかず材料とする我が国の食生活には安さだけではマッチしなかったのである。
ドリップ臭、変色肉、乾燥野菜を陳列していたのではいくらスーパーマーケットがワンストップショッピングを標榜していても、お客は昔から続いていた業種店を買いまわっていたのである。
関西スーパーが生鮮食品強化のため鮮度管理に成功し、各社を指導し始めてから様相は一変した。
関西スーパーは、当時自らが開発した一連の業務システムを実施する食品スーパーを本格的スーパーマーケットと呼び、業界ジャーナリズムはスーパーマーケットの業態が明確になったと称賛した。
今にして思えば「生鮮強化」スーパーマーケットの画期的戦略概念であった。
その後、数10年の間に数えきれないほど、多くの概念がスーパーマーケット企業に導入された。
企業の中で新しく生み出された概念もある。
■「○○の」概念
ところで、概念という言葉について一言。
概念の英訳はコンセプトである。
私がコンセプトとは何かと考えた、というよりは考えさせられた最初は、ある経営書を読んだ時だった。
はしがきに「この本を書くに当たり重視したことは、理論とコンセプトである。云々…」とあったからである。
意味がつかめなかったので辞書を引いたら、「概念」とだけあった。そこで国語辞書を引いたら、「言葉の意味内容・大雑把な様子」などとあった。友人に尋ねたら、「考え方だよ」と言って笑われた。
結果、ますます意味が分からなくなってかなりの期間、悩まされた。
この間、私自身はコンセプト・概念という言葉を使ったことはなかった。
しかし、他人はよく使うし、書物にも度々出てくる言葉なので、だんだん使用法の中から意味がつかめるようになってきた。
結論だけを述べれば、概念の前に「○○の」をつければ分かりやすくなる。
例えば、「この課題のコンセプトは」とか「この問題意識の概念は」といった具合である。
続きます