スーパーマーケットの競争力強化の視点 vol.18
第18回 マス・カスタマイゼーション―買い物習慣の変移
■小売業の伝統的戦略
カスタマイゼーションは小売業の昔からの基本的に重要な戦略であった。それをマス化の進んだ今日、復活させようということである。
固定客は、昔はお得意さん、あるいは上得意などと呼ばれた。食品小売店、とりわけ
生鮮食品店の上得意客とは、毎日買い物に来てくれる主婦たちであった。
ただし、これは都市部でのこと。
田舎(ほとんど農村)では、おかず材料を毎日買い物するというような慣習は
なかった。自給自足を行っていた。農村の非農業者は、近所の農業者から分けてもらっていた。
都市部における毎日のおかず材料、合わせて子供たちのおやつの菓子の買い物は、主婦の日課であった。その主婦を取り込むために、小売業ではさまざまなサービスを行っていた。おまけをつけたり、今日は何がおいしいよと声をかけたり、子供をほめたりして、人間関係を強めていったのである。
マス化が進んだ今日、同じような手段で固定客を獲得することはできない。主婦の買い物行動が、まったくと言ってよいほど、変わってしまったからである。
昔は、ときには子供をおんぶして、歩いて買い物をしていた。したがって、住居最寄りの商店街ないしはマーケット(市場)へは、徒歩10分以内で行くことのできる範囲が限度であった。冷蔵庫などの保存設備もなかったので、毎日買い物をした。
現在では、専業主婦でも車で買い物をするので、遠方のスーパーマーケット、ショッピングセンターでも出かけられる。保存設備も整っているので、まとめ買いをする。このような背景が、マスの追求を可能にしてきた。
有職主婦は、職場付近の商店街、またはスーパーマーケット、電車のターミナルの商業施設(デパ地下など)、降車駅付近の商業施設、自宅付近の商店街など、買い物場所を選べる。おまけに休日には、自動車でまとめ買いをしている。
スーパーマーケットの利用客は、その時々に応じて、買い物場所を使い分けている。
続きます