スーパーマーケットの競争力強化の視点 vol.20
第20回 マス・カスタマイゼーション―販促の差別化
■販促のサブコンセプトづくり
現在のSMの販売促進は、マスセールスに終始している。
チラシ特売が中核となり、相変わらず、大目玉でお客を釣り出し、定番品も買ってもらいたい、という類のものである。
とくに、競争力劣位企業のチラシは、バーゲンハンターの餌食となり、荒利率低下の元凶となり果てている。コンセプトが貧困すぎるからである。
わずかに、エブリディ・ロープライスが新しさを感じさせるが、これとて、コンセプトを深めないと効果に結びつかない。
販促は企業段階で、誰に、何を、なぜ、お勧めするかを練るべきである。
不特定多数客に、安く仕入れた商品を、大量に売るため、に企画したチラシは、同じようにして企画された競合店のチラシより、価格をより安くしなければ、効果が上がらない。
そこで、例えば、【誰に】不特定多数客を毎日の献立づくりに悩んでいる主婦に、【何を】メニューの主原料になる商品およびそれに彩りを加える副材料と調味料を、【なぜ】決めやすくするヒントを与えるため、に置き換えてみれば、差別化になるであろう。
このような考え方で練られた企画なら、お勧め品を少し目立つ陳列で、POPをつけ、少し安くすれば効果は上がるであろうか。
何よりも、そんな“店舗づくり”をしているお店に、お客は来店するのではないだろうか。
そして、そんな“店舗づくり”をする店に変えました、一度、目でお確かめください、というようなチラシは効果をあげるであろうか。
マス・カスタマイゼーションは、販促面でも以上のような、サブコンセプトを生み出す。以上のサブコンセプトをメニュー提案と呼ぶのはいかがだろうか。
■異質なコンセプトを融合・両立させよ
情報サービスでも、アメリカ、ヨーロッパ、中国、南米、等々世界の行楽、ピクニックによく使われるメニュー、飲料を紹介すれば、お客は喜ぶか。
若い主婦に、アジに代表されるような近海魚のおろし方、地元野菜の調理法、ドレッシングの作り方などの料理教室を、定期的に開催したり、サービスカウンターで料理相談に応じることは、マス・カスタマイゼーションにならないか。
以上のようなサービスには、コストはかかるが、従来のチラシ特売に比べ、中長期にどちらが、コスト効率が良くなるかを研究する必要はありそうである。
工業的マスセールスから脱皮することが、SMの現代化であり、マス・カスタマイゼーションは1つのキーコンセプトとなりうるであろう。
マス・カスタマイゼーションは2つのコンセプトを結合した概念である。
かつては、前者か後者を排除した。今、一度排除したコンセプトを復活させ、両者を両立させるための施策を新しく作り出せ、というわけである。
現代には、排除し合う複数の要因を、それぞれの良さ、優れている点を活かすための工夫が求められるようになっている。
合金は2つ以上の金属を溶け合わせ、それぞれの素材の長所を引き出し、新しい特長を作り出したものである。
溶け合わせるため、熱処理をしたり、媒体薬を加えたりする。優れた超合金を作り出すために、研究機関は膨大な資源(時間、エネルギー、カネ)を投入している。
SM企業もまた、古今東西南北の食生活、食文化の良さを引き出し、世界の食生活、食分野の発展に寄与するためには、いくつもの異質なコンセプトの融合を図り、新しいコンセプトを打ち出し、関係者が共有しなければならなくなっている。
これがグローバリゼーションである。
資源投入の装備を怠りなく。