スーパーマーケットの競争力強化の視点 vol.21
第21回 グローバリゼーション-国境を越える産業、経済、芸術、スポーツ
■グローバリゼーションの意味
前述のマス・カスタマイゼーションの記述に先立って、現代化に深い関わり合いをもつ、グローバリゼーションを取り上げたいと述べた。
ところで、グローバリゼーションという言葉は改めて断る必要もなかろうが、経営上の戦略コンセプトではない。
20世紀半ばの不幸な世界戦争によって、完全に終焉した帝国主義による植民地政策に変わる、世界各地域・各国との交流、かかわり合いの変化の流れを総称する用語である。
国境を越え、現地に新しく現地法人を設立したり、現地法人を買収したり、現地法人と合弁で事業展開をする企業をグローバル企業という。
コカコーラ、マクドナルド、ケンタッキー・フライドチキンなどが代表選手であろう。IBM、シティ・バンクなどはさしずめ世界チャンピオンというところか。日本からはトヨタ、ソニー、パナソニックなどがチャンピオンシップの争奪戦に名乗りを上げている。
■製造業のグローバル化はマーケットを創造する
グローバル企業は20世紀の後半から急増しはじめ、21世紀にはさらに増加のピッチが上がるものと思われる。
製造業がグローバル化するメカニズムを、ごく単純化して例示すると、次のようにまとめることができる。
先進国の企業が途上国企業に進出する場合、直接の目的は①製造コストの削減、及び②物流コストを含む販売コストの削減である。
途上国においては、資本が投入されることによって、①雇用が増大し、②インフラ(発電、輸送手段など)が整備され、③消費力が増大する。そのため、自国の生産力も強化される。
経済力が向上する国には、他のグローバル企業も投資したがる。この投資により、現地企業はさらに活性化し、消費力を増し、経済全体を押し上げる。
中国においては、以上のような循環のメカニズムは数十年続いているため、中国の中にもグローバル企業が生まれ、外国企業を買収したり、海外進出を目指す企業が増えだしている。
以上を再び要約すれば、製造業のグローバル化は新しいマーケットの創造につながると言うことになる。
10億以上の人口をもつ新しい市場の出現に欧米先進国のグローバル企業が目をつけるのは当然のことである。
アジアには中国以外にも、インド、インドネシア、ベトナムなど巨大潜在マーケットがいくつもまだ眠っている。この眠りを起こすのがグローバリゼーションの流れということだ。
■スポーツ、芸術、政治の世界で進むグローバル化
以上が産業・経済のグローバリゼーションの骨組みであるが、これ以外の領域でもグローバル化は進んでいる。スポーツ、芸術、政治の世界で、この性向が目立っている。
ヨーロッパで発展していたスポーツ各種はオリンピックを通じて、全世界に広まった。
逆に世界的にはローカルのスポーツもオリンピックに取り上げられ、世界的に広まっている。柔道はその代表例といえよう。野球はアメリカで生まれたスポーツであるが、オリンピックにも取り上げられている。本場アメリカのメジャーリーグで活躍するスターの多くがUSAから見れば外国籍のプレーヤーである。
日本人にとって驚くべきことは、日本の国技の相撲の世界で最高位の横綱の座が、数年にわたって外国人によって占められている事実である。これでは国技ではなく、国際技だと嘆く人もいる。これは日本にとって、あるいは日本人にとって、良いことなのか、悪いことなのか。
西洋音楽は今では、日本でクリエートされた音楽ではないという意味で西洋音楽と呼ばれるが、今日では日本人の音楽になりきっている。音楽は言葉の違いによる障害がないのでグローバル化が進めやすいのであろう。
美術の世界にも同じことが言えよう。
油絵は今やヨーロッパのみの絵ではなくなっている。
環境問題、資源問題もグローバル化している。地球温暖化問題は今や世界最大の問題である。しかし、いまだに対策について各国の合意はできていない。
続きます