スーパーマーケットの競争力強化の視点 vol.24
第24回 グローバリゼーション-食材のグローバリゼーションの問題点
■マイナス要因① 環境破壊の問題
脱線が長くなり過ぎたが、本論に戻す。
食材のグローバリゼーションは食生活を豊かにするが、「山が高くなれば、谷が深くなる」の例えの通り、良いことばかりではない。
マイナス面の第一は農業開発の環境破壊である。農地開発は昔は自給自足体制を整えるため小規模に行われてきた。交易が活性化するにつれ、輸出・移出商品を増産することを目的に大規模化した。現在では南米のアマゾン流域に代表例が見られるように、木材を輸出するため、広域にわたり森林を伐採し、その後に大規模農場をつくり、輸出する企業が増えている。これらの大規模開発行為は環境を破壊し、さまざまな問題を引き起こしている。
その最大の問題は地球温暖化の重要な一因となっていることであろう。アジアの南方諸島、アフリカなどにも同じ問題が発生している。また、旧ソ連領の大規模干拓は塩害のため大失敗に終わり、沿岸漁民に多大な損害を与え、復旧のめども立たず困り果てているという。
■マイナス要因② 安全性の問題
第二のマイナス要因は、安心・安全である。
安心・安全は食生活で最も注意を払われる項目の筆頭に上げられる。中国では昔から生ものは口にしない食習慣があったと聞く。中国が誇る食文化の一つであろう。
しかし安心・安全は、しばしば、無知・過失による自己、時には業者の欲ばりによる犯罪などによって、破られる。安心・安全が破られた場合、被害者に対する補償、残余商品の処分などの善後処理と共に、原因を究明し、再発防止策を講じなければならない。
安心・安全は、国内の事故でもしばしば発生する。集団中毒の場合など、旅館、弁当提供業者などは営業停止の処分を受ける。しかも比較的短期に終るケースが多い。しかし、国際間にまたがる事故の場合、善後処理、再発防止とも、長時間を要し、すっきりした問題解決が行えないケースが多くなる。アメリカの狂牛病事件、中国の冷凍餃子事件などが好例であろう。
食材のグローバル化が進むに従い、この種の問題は件数が増えることが懸念される。そして当事国同士の国民の中に相互不信の感情が生まれ、高まることを恐れる。
ところで、ここ1年間の間に国際間の摩擦以上に嫌な事件が起こっている。それは商品の品質の不正表示である。工業用にしか使うことが認められていない汚染米を半分近くも混入した米を食品用と不正表示して醸造業者に売りつけたり、外国産のウナギを国内産と偽ってスーパーに納入したり、ブロイラーを地養鶏に混入して地養鶏の産地名を表示したりする事件が相次いで摘発された。これらの不祥事件のニュース接し、知人の一人は「氷山の一角」とうそぶいた。「嘘ももとでのうち」といった観念がまだ残っているのかと悪感のする思いであった。
特に国際摩擦のあった相手国の人達がこんな事件が日本では度々起こっていることを知ったら、何と思うであろうか。
さらに、ごく最近出会った事実を一つ。
あるコンビニで野菜入り卵焼きを購入した。上に貼られたラベルに「国内産タマゴの自家割り、国内産のタマネギ、国内産のニンジン、国内産のいんげん使用」と表示してあった。
この卵焼きのメーカーは安心・安全と味の良さをアピールするためにこのラベルを使用しているのだとは思ったが、発展途上国の人達がこのラベルを見たら、何と思うであろうか。日本人に対する信頼感はどう変わるであろうか。
続きます