スーパーマーケットの競争力強化の視点 vol.27
第27回グローバリゼーション-心構えの第二段階:準備期 Part1
現実に、中長期に渡って安定利益を確保し続けることは、生やさしいことではない。
少なくとも、次の2つのサブシステムを確立させておかなければならない。
■レイバー・スケジューリング
第1のサブシステムは、開店から閉店まで、定められたサービス水準を保った“売場づくり(陳列、商品づくり、鮮度など)”を行うための店内作業システムである。
レイバー・スケジューリングと呼ぶ企業が多いようだ。
ここ数年、好業績をあげていても、たびたび品切れ、品出し遅れを起こすなど、売場の乱れが気になるスーパーマーケットは、必ず、ある時から業績が悪化する。(その理由については後で述べる)
レイバー・スケジューリングの目的は
①サービスレベルの安定
②マン・アワー数の確保(必ず少しゆとりをもたせること)であり、
③人件費の削減は最後にすべきである。
なお、レイバー・スケジューリングには、いわゆる標準化が伴う。
標準の決め方にはいろいろ論議が必要であり、企業ごとに異なるのが当然であるが、定められた標準は必ず従業員全員に守らせねばならない。
店内作業システムづくりで、最も難しいことは、パート従業員はもとよりアルバイトの人達にまで、決め事(標準)を守らせることである。
そのためには、店長、売場チーフの指導力教育が重要である。
レイバー・スケジューリングが未完結な企業は、直ちに完結を目指して、改善に可能な限りのエネルギーと時間を投入すべきである。
■販売予算コントロールシステム
不可欠なサブシステムの第2は、販売予算のコントロールシステムである。
●予算コントロール以前
40年ほど前、まだ私が実務にたずさわっていた頃、ガルブレイスの『不確実性の時代』を読んで、安心というか、複雑な読後感を持ったことがあった。
当時、売上げは毎月大きくばらついていた。
同じチラシ特売を行っても、成果は店によって大変差異が大きかった。
好業績の店では、売上げが平日平均の2~3倍になることも少なくなかったが、不振店では、1.5倍に止まるのが通例であった。単品別の売上数は、なぜこんなにも売れたのか、あるいはその反対なのか、説明がつかなかった。
小売りの商売とは、不確実性そのものだということが、本を読んで分かったので安心した。
とはいえ、それでは、経営にたずさわる者としては困る。何とも言えない複雑な気持ちになったものであった。
今から20年前頃までに学校を卒業して、チェーンストアに入社した人達には、理解できないかもしれないが、私が『不確実性の時代』を読んだ頃のチェーンストアは、店内作業の標準化は全く行われていなかった。
品揃えも各店バラバラ、正午になっても品出しされていない商品も少なくなかった。よく売れる商品は品切れし、死筋商品があちこちに散乱していた。
鮮度管理という言葉すら、使われていなかった時代である。
こんな状況の中でも、今日、活躍しているスーパーマーケットは、トップはもとより、バイヤー、店長、チーフ達は売上げを伸ばす努力は行っていた。
そして、業績を伸ばしてきた。
ただし、月次の売上目標は口称目標、努力目標であり、実質目標ではなかった。なにより、コントロールする手段を持たなかったのである。
●業務システム標準化の導入
しかし、昭和40年代の半ばから、関西スーパーが鮮度管理を中核とする店内作業システムを作り上げ、同業各社に惜し気もなく紹介してから、状況は大きく変わり出した。
品揃え、商品づくり、品出し、陳列等々、“売場づくり”の業務システムは標準化(決め事と呼ぶ企業が多かった)が進み、店ごとのバラつきは影をひそめた。そして売場も業績も安定しだした。
その中で、より意欲的なスーパーマーケットは、月次の販売計画立案システムの強化にも力を入れ、売上予算もコントロールできるようになったのである。
続きます