スーパーマーケットの競争力強化の視点 vol.29
第29回グローバリゼーション-心構えの第三段階:戦略展開
■販促概念から脱皮
ここで私が強調したいことは、次の2つのことである。
その1は、一昔の大目玉商品で、お客を釣り出すといったような素朴な販促概念から脱皮することである。
「この季節だからこの商品を」、「この社会行事にはこれこれの商品を」、「この週末にはこのメニューをメインディッシュに」、「この度、こんな商品を開発しました」などなど、お客様の食生活の向上に貢献するためのお勧め品をお知らせすることが、チラシ特売の目的である。
これに対し、「そんなキレイごと(独りよがり)では商売は成り立たない」という反論もあろう。
「独りよがり」では商売にはならない。だからこそ、予算達成が可能かの試算を3段階にも当たって行う必要があるのだ。まず、販売促進部において。次のステップでは、商品部において、各部門別に。最後に、店舗において店別予算へ達成見込を確認する必要があるのである。
■フェイス調整の重要性
強調点の2番目は、文中のフェイス調整の重要性である。
基準フェイス表を使ってフェイス調整を行う理由は、今日のフェイス調整を行った後の現場で明日のフェイス調整を行うと、移動された定番商品の関連が乱れる。5~6回同じことが繰り返されると、当初に設定した関連が大幅に乱れ、初めのフェイス設定方針が担当者にも分からなくなってしまう。つまり、お客様から見て、選びにくく、買い忘れをおこしやすい陳列になってしまう。これを防ぐため、フェイス調整は、必ず、基準フェイス表の上で行う必要がある。
さて、サンマを例に、販促品に使う場合のフェイス調整の行い方の要点は次のようなものある。
当該商品に、カテゴリーの下段の中央部分で4フェイス与える。前年、または前回実績データから、チーフはこの販促価格なら、何パックぐらい売れるかが予測可能である。
発注量完売に自信の持てない場合は、1フェイスを増やすなどの調整を行う。
次に、輸入エビ、サケも当日の販促品であれば、それらの販促品のフェイスも決める。
この場合、基準フェイス表がないと、販促品の陳列場所も決めにくくなる。販促品ならばすべて下段に大量に陳列すればいいというものでもない。
さて、主な販促品のフェイスが決まれば、次にはその左右に何を陳列するかを決めねばならない。サンマの左にはスルメイカか、イワシか、カレイか、右には何がよいか。
つまり、販促品は隣に並べられる商品によってアピール度が変わるのである。また、定番品も販促品との位置関係により、売上個数が変わるのである。
従って、フェイス調整の適否により、売上は相当に変動することになる。
あるベテラン・チーフは、「フェイス調整には少なくとも1時間半はかけたい。しかし実際には半分も時間をかけてない。30分くらいで済ますことが少なくない」と述懐していた。
お客様の食生活の向上に貢献する、販促策とは、独りよがりのコンセプトではない。しかし、これを効果的に実践するには、上述のように、作業的に見ただけでも大変な時間とエネルギーを必要とする。だからこそ、これを実践する企業は競争力優位を保てるのである。そして、販売予算コントロールの精度も高まるのである。