スーパーマーケットの競争力強化の視点 vol.35
第35回スーパーマーケットのマーケティング……「スーパーマーケティング」の定義②
■マーケティングの使命
企業の使命とは、企業活動が社会・市場に貢献する機能を呼ぶ言葉である。経営活動は社会・市場にプラスにもマイナスにも影響をもたらす。プラスの影響をとらえる場合、使命という言葉を用いることが多いようである。
使命という用語は、宗教的または倫理的ニュアンスを含めて使われることが多い。
また、受け取る側にもそのような感覚が強いのであろう。
しかし、経営を論ずる場合の使命という用語は、倫理とは無関係である。
といっても、経営が倫理と無関係というわけではない。逆に、倫理性は経営に欠くことのできない重要側面である。
原爆や公害問題に代表されるように、科学も研究結果の使い方は重要な倫理問題である。しかし、科学そのものは、倫理とは関係なく自然の法則性を研究する学問である。同じように経営活動の市場にもたらす影響の関係の論理を追求する場合、その経営の機能(活動)を使命と呼ぶ。いわば、社会科学の用語である。
製造業の使命は、商品を製造してユーザーに提供することであり、運輸業の使命は、人および貨物を輸送することである。
小売業の使命は、商品を仕入れ、店に陳列して、販売することである。
使命が成り立たなくなると、企業は存続しえなくなる。
戦前には、絹の製糸および織布工業は、綿糸布の製造業とならんで、日本の花形産業であったことがある。しかし、ナイロンなどの合成繊維に需要を奪われ、使命が消滅したので、企業も消滅した。また、綿糸布製造業も、発展途上国との価格競争で立ち行かなくなったので、縮小を余儀なくされている。
企業は存続のためには、使命システムを変えざるを得なくなることもある(転業)。また発展のため、他の使命システムを導入することもある(多角化)。
使命の選択、使命遂行の効果を高めるため、企業が行う調査に始まる計画・実施・レビューの一連の経営活動をマーケティングと呼ぶのである。
マーケティングと経営戦略は、経営活動のほぼ同じ領域をカバーする用語で、マーケティングは使命と市場の関係に焦点を置いた場合によく使われ、戦略は使命利益、能力開発(組織)との循環系の中の考察を行う際に用いられる頻度が多いように思われる。
次回からは、スーパーマーケットのマーケティングの今日的課題をいくつか掘り下げて考えることにする。
続きます