スーパーマーケットの競争力強化の視点 vol.36
第36回スーパーマーケットのマーケティング……“店舗づくり”
■マーケティングの今日的課題
これからはスーパーマーケットのマーケティングの今日的課題を考えてみたい。
“店舗づくり”とは、安土敏氏の著書・『スーパーマーケット原論』の文中の名台詞で用いた、小売業のコンセプトである。
曰く。「製造業のプロダクト(産出するもの)は文字通り、プロダクト(商品)であるが、小売業のプロダクトは、“店舗づくり”である」(店舗づくりとは、店舗のハードウェアと店舗で実施されるマーチャンダイジング、人物サービスなどのソフトウェアの総称)
追加説明は蛇足の感をともなうが、あえて補足すれば、チェーンストアは、使命としてより優れた店舗づくりを産出するために本部、店舗、その他の部分で、総力を結集すべき、ということになる。
著者は、また同著の中で、次の名台詞も残している。
曰く。「主婦は、毎日の買い物で何を買うかを決める前に、どこ(どの店)に行くかを決める」
この台詞の帰結は、「スーパーマーケットは、より多くの主婦に選ばれる“店舗づくり”を励むべき」である。
製造業のプロダクト(商品)は国内はもとより、全世界に移動することが可能である。
しかし、小売業のプロダクト(店舗づくりのハードウェア)は移動不能である。地区産業と呼ばれる所以である。
したがって、店舗づくりでは、まずどこに店をつくるかが大切になる。
この場合の「どこ」には、どの地域のどの地点に、という2つの意味が含まれている。
小売業では、どの地域のどの地点に、どんな店をつくるかを検討することを立地戦略と呼ぶ。
思えば、我が国のスーパーマーケットの立地戦略も、ここ半世紀の間に大きく変わったものである。この変貌はもとより、社会の変化に影響されたものであるが、スーパーマーケットの店舗づくりのソフトウェア、すなわち販売力の発展が影響している点も見逃せない。
■モータリゼーションの影響
一例をあげてみよう。昨今は、ショッピングセンターに主婦がマイカーを運転して買い物に行くことは、ごく普通のこととなっている。
50年、いや30年前でも、畑の中に建てられた店に主婦が夕食のおかずを買い物に出かけるなどのことは考えられなかった。
モータリゼーションが、買い物の仕方を変えたのである。
その結果、駅前商店街には、寂れてしまったところが少なくない。
ところで、スーパーが登場した頃は、スーパーも、駅前商店街でなければ採算がとれなかった。単独店に充分な集客力がなかったからである。食品スーパーは商店街に出店しても思うようには業績を伸ばせなかった。生鮮3品が、既存の繁盛業種店に敵わなかったからである。
この頃、食品スーパーと衣料品スーパーは未分化であった。セルフ・サービスで安売りをする店をスーパーと呼んでいた。
続きます