スーパーマーケットの競争力強化の視点 vol.37
第37回スーパーマーケットのマーケティング……日本における導入期
■ 衣料スーパーと食品スーパー
日本のスーパーの導入期、まず頭角を表したのは、衣料スーパーであった。衣料品の販売には食品の鮮度管理に匹敵するような決定的な店内作業システムは不要であったこと、メーカーの出荷価格と小売売価の差が大きかったことなどが原因で、薄利多売の効果が出しやすかったので、衣料スーパーは導入期にすぐ充分な利益を確保できた。
また、衣料品と食品のマーケティング上の最大の違いは、前者は買い回り商品、後者は最寄商品と呼ばれ、商圏の広さが全く違うことである。衣料品は著名な店から出現すると、百貨店に例を見られるように、(百貨店は衣料品部門が主力の業態)商圏がどんどん広がるのに対し、食品の商圏は、既存店では拡張されることはほとんどないのである。
チェーンストアの導入期には、以上のような理由で、衣料スーパーが素朴な薄利多売戦略でスタートダッシュした。「もっと店を大きくすれば、もっと売れるようになる。」という思いで、隣接店を買い取り、売場を拡張することもしばしばあった。これが人気となって、商店街の商圏が拡がり、客数は更に増加した。このような衣料スーパーは食品部門も併設し(1号店から食品売場を併設した企業もあった)、いわゆる日本的GMS、または総合スーパーと呼ばれるようになった。
これに対し、食品スーパーは鮮度管理を中核とする、店内業務システムが、一定水準に達するまでは、ロープライス戦略も効果が上がらず、店舗の拡張も新店の出店も思うにまかせなかった。
このようにして、昭和40年ころには、総合スーパーは、すでに成長期と迎えたが、今日のスーパーマーケット企業はまだ、導入期の苦吟を続けていた。
食品スーパーが成長期を迎えたのは、昭和45年前後からである。
続きます