スーパーマーケットの競争力強化の視点 vol.42
第42回スーパーマーケットのマーケティング-“マスカスタマイゼーション”
■ 店と顧客の複雑な関係
小売業、外食産業などのサービス業のポスト・マス追求の時代のキーワードは“マスカスタマイゼーション”である。
不特定多数のマスに対し、カスタマイゼーションとは、固定客づくり、つまり、相対立する概念である。つまり、マス化と固定客づくりを両立させようとする新しい概念である。
小売業では、かつて、工業的商業に変革した時、カスタマイゼーションを放棄した。
今日、本来、小売業の重要概念である、カスタマイゼーションを呼び返す必要に追われている。
かつて、我が国の小売業は上得意を多く持つことによって、繁栄をはかっていた。焦点と上得意の間は、信頼の絆によって支えられていた。
スーパーが出現し、この信頼関係を軽視、いや、無視するような商売を始めた。消費者もロープライス商品を売りつけるような商売をするスーパーに反応して、バーゲンハンターと呼ばれる買い物をする人達が増えた。
しかし、間もなく、スーパーは思ったより安くはない。目玉商品だけの安売り、というような認識が主婦の間に広まってしまった。
オイル・ショックのあった頃、私がお手伝いをしていた中堅どころのチェーン企業の営業企画課長が、ある日、2人だけの会食の場で、小さな声で、
「サシミだけは、うちの会社の商品は買わないようにしている」
と漏らした。
スーパーマーケットと顧客の間の信頼関係が最悪になっていた頃の話である。
そこで、ポスト・マス追求の時代のスーパーマーケットのマーケティングを議論する必要が出てきたのである。
続きます
1 件のコメント
休日に職場で噂に聞いていた杉山先生のブログを覗いてみました。一気にこれまでの連載を読みました。自分の経験不足もあり、理解の難しい話もありましたが、何となくスーパーマーケットを運営する上で考えるべき視点が分かるような気がして大変勉強になりました。意識改革で、多くの人々は自分の意識ではなく他人の意識を変えたがっている話や、欧米ではお客様は神様ではなく王様にたとえられる話、スーパーマーケットのマーケティングの考察など大変参考になりました。
2月のご自身への痛烈な反省は自分も考えられました。ご指摘のように多くのスーパーマーケットの本部の担当者や専門誌の関係者は、一般的な普通の家庭とは異なる環境にいると思います。私自身もしかりです。それでも、ごく普通の家庭の身近な幸せに貢献する仕事を考えるのスーパーマーケットに関わる自分の役割と、思いを新たにいたしました。次回のブログの更新を楽しみにしております。