スーパーマーケットのマーケティング vol.2
2. チェーンストアのマーチャンダイジング
■ダンカン教授のレクチャーから学んだこと
チェーンストアのマーケティングとは何なのか――。その方向性とイメージを私自身が意識づけられたのは東京オリンピックの年に参加した米国流通業の視察ツアーの時だった。
カリフォルニア大学で小売研究のオーソリティであるダンカン教授のレクチャーを受けた。そのレクチャーの中で教授は「製造業と小売業では“マーチャンダイジング”という言葉の使い方が違う。製造業ではマーチャンダイジングとはマーケティングの中のサブ概念の一つであり、製品群の中の単品(1つの製品)の材料の仕入れから製造、販売(含む流通)までの取り扱い方、つまり商品計画を意味する。一方、小売業では同じ言葉を製造号のマーケティングとほぼ同じような意味を持たせて使うことが多く、バイイング・アンド・セリングの内容が主体である」と述べられた。
その頃の私は商社を退職し、マネジメントの教育団体を経て、初期の衣料中心のチェーンストアに就職していた。マーケティングという言葉の内容については、曖昧さが残ってはいたが、使い続けているうちにおおよそのイメージはつかめるようになっていたように思う。それよりも小売業で使うマーチャンダイジングという言葉の意味に悩まされていた。
しかし、先述のダンカン教授のレクチャーにより、それまで分からなかったスーパーマーケットのマーチャンダイジングもなんとか分かるようになった。
それ以来、私は日本語ではマーチャンダイジングすなわち、バイイング・アンド・セリングを「仕入れから販売までの商品に関わる一切の業務」と訳して使ってきた。
小売業では“マーチャンダイジング”を製造業の“マーケティング”のような広い意味で使う例がある。例えば、品揃えはマーチャンダイジングの主要なサブ概念の一つである。当時米国のチェーンストアでは、品揃えにはマーケティングの主要サブ概念の“セグメンテーション”が取り入れられていた。所得別、職業別、人種別などのようなセグメントである。
ダンカン教授のレクチャー以後、私はあまり“マーケティング”にはこだわらずに仕事を進めてきた。ところが、数年後には、再び“マーケティング”の壁に突き当たったのである。
続きます