スーパーマーケットのマーケティング vol.3
3. 本格的スーパーマーケットの“店舗づくり”
■関西スーパーマーケットの規範モデル
昭和40年代の中頃、関西スーパーマーケットが鮮度管理を中核に「本格的スーパーマーケット」と称する店舗づくりに成功し、業界ジャーナリズムの間に「関西スーパーマーケットの業態確立」という評判が高まり、話題となった。その頃、私も同社を訪問し、勉強させてもらった。さすがに「本格的スーパーマーケット」の店舗づくりは素晴らしいものだった。それまで私が漠然といだいていた理想的な店舗が現実に目の前に存在していたのである。バックルームもまた作業のしやすいように無駄な手間をかけないように設計されていた。
当時の北野祐次社長から数回にわたって本格的スーパーマーケットをつくり上げるまでの経緯、考え方の推移、社員たちとのコミュニケーション等々の説明をしていただいた。すべてが、それまで私が学んできたマネジメントの規範モデルにマッチした進め方で共感するところ大であった。
■店内業務システムの重要性
その規範モデルの中でも特に注目すべき一例をあげれば、業務システム、特に店内業務システムとでも呼ぶべき、経営の最重要サブシステムの“あるべき姿”であった。
業務システムとは、戦略計画を遂行するための実践活動のシステムで、スーパーマーケットでは発注→検収→商品づくり→品出し陳列→陳列手直し→売り切りなどのプロセスが主要要素であり、最終的に利益を実現するサブシステムである。そして、それを実現するためのレイバー・スケジュールは、業務システムの柱ともいうべきものである。
業務システムが未熟だったり、ずさんであった場合、すぐれた戦略構想はもちろん所期の効果はあげ得ない。
関西スーパーマーケットは、この頃、毎月各店とも極めて順調に予算達成を続けていたという。
いくつものスーパーマーケットの従業員に薦めて私も加わり、度々店舗見学に訪れ、勉強させてもらった。
店内はいつも整備され、陳列も乱れるようなことはなかった。つまり、いつも安定していた。しかし、変化が少な過ぎることが気になり出したのである。シーズンの変わり目には品揃えはちゃんと切り替えられる。また、もずくに代表されるように、関西スーパー独自の開発商品も少しずつ増えてはいた。しかし、新しい戦略路線の展開を感じさせる変化はほとんど見られなかった。
続きます