スーパーマーケットのマーケティング vol.4
4. スーパーマーケット談議
■井上氏との実り多き議論
その頃(昭和40年代の中頃)、私は大阪に出張するたびに夕方、若くして急逝したニッショー の井上部長を呼び出し、夕食を共にすることが多かった。主にスーパーマーケット談議をするためであった。
この会合は私には大変勉強になったので、故・井上氏には今でも感謝している。会合では、関西スーパーマーケットやサミットの評価が必ず話題にのぼった。2人の見解が一致することもあったが、相反することもあった。一致する場合は話がすぐ終わり、話題が移る。不一致の場合は、議論になるので、より多くの時間を費やした。この議論が私にとって大いに有意義で、勉強させてもらった。
それらの議論の一つに次のようなことがあった。
関西スーパーマーケットの業務システムの論議を進めていた時、井上さんは「システムが硬直化して新しい戦略の展開を拒否しているのではないか」と述べられた。
そこで私は、「鮮度管理自体が重要な戦略ではないか」と反論した。
これに対して井上さんは「鮮度管理だけではマーケティングとは言えまい?」と反論してきた。
当時、ニッショーではマーケティングのデータシステムの開発を始めていたようだ。ちなみに同社ではレイバースケジューリングシステムが第一義的に完成され、コンピューターを使って作業割り当てを行っていた。
私は井上さんの再反論に出合って、関西スーパーマーケットの“店舗づくり”について感じていた、ある不安が明確になった。先にも述べたように、関西スーパーマーケットの“店舗づくり”には敬意をはらっていたが、何度か視察させてもらった際に受けた諸説明の中には、マーケティング意識のベースが明確に見えてこなかったからである。
続きます