スーパーマーケットのマーケティング Vol.9
9. 業態によって異なる転機の時期
■GMSの成長期への移行
今、私が転機について色々述べようとする理由を先に言えば、転機の前と後では企業のすること、つまり政策が大きく変わるからである。変えなくてもすむならば、それは転機とは言えない。転機が訪れたら、企業の重点課題、優先課題なかんずく、戦略的重点課題の見直しが必要になる。
スーパーマーケットはGMSなどと同じ頃、大量生産、高度大量消費に呼応して大量販売を行うべく、誕生した。この業態の揺籃期の戦略的最重点課題は、プライシング、つまり、低価格販売であった。
しかし、生鮮食品の利用度の高い我が国の家庭食では、価格だけでは、それまでの業種店(つまり、魚屋、八百屋、肉屋など)からシェアを奪えず、業績も上がらず、成長期への移行が遅れた。
逆に衣料品は、百貨店、洋品店からのシェア奪取がプライシングだけでも容易であり、戦争による耐久生活から開放され、需要が急増したことも重なって、業績の伸びが著しく、GMSはスーパーマーケットより10年は早く成長期に突入することができた。
■スーパーマーケットの成長期への移行
スーパーマーケットが成長期に移行したのは、鮮度管理のシステムを稼働させてからである。成長期を迎えたスーパーマーケット各社は、出店戦略を最重要視し、企業規模を拡大した。売場面積を順次拡大し、折からのモータリゼーションの気運にものり、立地条件の革新にも成功した。
その間、店内作業システムの開発、配送センターの設置など、業務システムの開発・改善も進めた。また、サミットが開発し、「演作システム」と名づけたような、ルーティン化された営業手続システムを作り上げる努力も行ってきた。
■そして成熟期へ
成長期に上述のような経営努力を積み重ねているうちに、次の転機が訪れた。すなわち成熟期を迎えたのである。
成熟期とは、成長期間中、企業が荒削りな経営システム(戦略システムと業務システムが含まれる)のままで進めた規模拡大の速度をダウンさせ、経営システムの成熟をはかり、より充実したサービスを市場(顧客に)提供するようになる期間である。
この期間中に、企業間競争は、成長期にくらべ、厳しさを倍加させる。なぜならば、競争企業もまた経営システムを成熟強化させているからである。
以上を、あえて一言にまとめて言えば、出店競争の矛先を収めて、既存店の活性化に重点施策を移すべきということになる。
続きます