スーパーマーケットのマーケティング Vol.10
10. 成熟期の戦略課題
■アジアの転換期
ここまでチェーンストアの転機について考えてきたが、ここで戦略課題を探るためには、もう1つの大きな転換期について考える必要がある。それは時代の要請とも呼ぶべきかもしれない。
今、世界の中で特にアジアは、大きな転換の途上にある。世界経済の中で、中国、インドなど、工業化で遅れをとっていた昔の大国の台頭ぶりはすさまじい。これらの国々をもはや新興国と呼ぶ期間も長くはないであろう。半世紀前まで、ヨーロッパと北米の白人諸国によって構成されていた先進国の構造がつくり変えられつつある。
アジア、南米からも先進国に仲間入りする国が、今後一世紀の間に数国は登場することは確実であろう。
日本はこれらの国に少し先駆けて先進国への仲間入りを果たした。しかし、その優位性にあぐらをかくことは許されない。今後先進国入りをする諸国は、日本以上に「追いつけ、追い抜け」のエネルギーに満ちあふれているはずである。
■グローバリゼーションの特色
さて、以上のような転換の動きをグローバリゼーションと呼ぶ。グローバリゼーションの特色の1つに、先進国のテクノロジーを発展途上国に移転して、安い人件費のもとで製品をつくり、先進国で消費しようとする流れがある。この流れは、必然的に、途上国に工業化をもたらす。工業化が進む途上国では、雇用が増大し、熟練労働者が増え、国民所得が増大する。国民所得の増大は消費力の増大につながり、経済全体を活性化させる。
このような良循環が途上国の地歩向上の原動力となるのだが、この循環のスピードを高めるものとして資金調達と教育があげられる。両者とも工業化進展との循環関係をもっている。ちなみにアメリカへの留学生の人数は、日本人は減少の傾向にあるが、中国人はすでに日本人の約10倍に達し、なお増え続けているという。
続きます