スーパーマーケットのマーケティング Vol.16
16. 閑話休題 ― 固定客づくりとは
■小売店の御用聞き
小売店は、昔から固定客づくりのため、さまざまな工夫を凝らしてきた。子供の頃、貧乏教師の私の家にも、酒屋やクリーニング屋が定期的に小僧を御用聞きに回らせていたことを覚えている。お金持ちの家には、魚屋や八百屋まで御用聞きを回らせていた。
私の家に御用聞きを回す酒屋では、電話の取り次ぎまでしてくれていた。歩いて2~3分はかかったはずであるが、小僧が走ってきて母親に告げると、母親も酒屋まで走って電話に応答していた。もっともこんなことは年に1、2度しかなかったようではあったが。固定客だからこんなサービスまでしてくれたのか、サービスが良いから固定客になったのか、私には分からずじまいである。
何はともあれ、この酒屋は若い従業員が10名以上もいる繁盛店であった。
■釣具店の手口
エピソードをもう一つ。
若い頃、釣り好きの私はよく釣具店を訪れた。ある日、釣具店の一軒で、「あなたのために良い竿を仕入れておきました」と言いながら、使いつけの竿より一格上等な竿を見せてくれた。小遣いが足りないと答えると、「支払いはいつでもいいから」ということで、買うことにした。支払いに次回その店に行くと、「この竿もあなたのために仕入れておいた」というわけで、また買わされた。同じ手口で続けて5本の竿を買わされて、支払いに大変苦労したことがあった。この釣具店のおやじは私の欲しがる竿のレベルをよく知っていたのだ。
「お客のための仕入れ、あるいは品揃え」には、そのお客は弱い。つまり、取り込まれてしまいがちである。
■現代における固定客づくり
こんなことも固定客づくりには役立つことが多いのではないか。
固定客づくりの昔の手法が今でも役立つことは少ないはずである。現代化社会において、新しい手法を開発するには、知恵が必要である。
企業間の知恵比べがこれからの優劣を決める鍵となると言っても過言ではあるまい。
そこで、これからは知恵の出し方を検討したいのでが、その前に、その知恵は「何に」ついての知恵なのか、そしてその「何に」は本当に経営に役立つのかを確認しておきたい。
「何に」とは、マス・カスタマイゼーションである。
スーパーマーケット企業にとって、マス・カスタマイゼーションとは、マスを追求すると同時に固定客づくりにも力を入れることである。
続きます