スーパーマーケットのマーケティング Vol.17
17. コモディティ商品とライフスタイル商品
■スーパーマーケットの品揃え
度々ふれてきたように、スーパーマーケットは大量仕入、大量販売を行っているうちに、繰り返し買い物に来てくれるお客の大切さを忘れてしまっていた。
お客の側から見れば、店のサービスの特徴が自分の好みであったり、ほだされると、その店に繰り返し出かけるようになる。このことの大事さをスーパーマーケットは放念してしまったのである。
スーパーマーケットの品揃えはカテゴリ毎にABC分析を行い、Aランクの上位から選定してきた。Aランクの上位アイテムは、昔は売れ筋、もうけ筋と呼ばれていたアイテムであった。このような品揃えの仕方を業界ではしぼり込みと称している。もっとも、数年前からいくつかの企業では、しぼり込まれた商品をコモディティ・アイテム(必需品)と呼び、ライフスタイルごとに要望される商品(例えば、料理をする時間の取れないキャリアウーマン、ないしは料理を不得手とする主婦のための惣菜)をライフスタイル・アイテムと名づけ、ライフスタイル商品も開発して品揃えに加えるようになってはいる。
ライフスタイル商品強化は時代の要請に応える政策であり、マス追求オンリーから一歩前進している。しかし、Wの転換期を意識した基本戦略コンセプトの改革に伴う政策とはいいかねる。今大事なことは、基本コンセプトの革新であり、固定客づくりに全社の力を結集することである。
■固定客づくりについて筆を進める前に一言
では、固定客づくりはどのように進めるべきか。そして、それが経営に本当に良い効果をもたらすかについての概説に筆を進めることにする。
この概説は、私の長い雑文の中でキーポイントとも言うべき、スーパーマーケットの将来の進むべき戦略についての叙述である。換言すれば、これまでの長過ぎた前置きである。しかし、将来のための戦略論の必要性、有効性を述べるためには、その戦略システムの土台となる、これまでに築き上げてきた業務システム、能開システム、そしてこれまでの戦略システムの評価も重要な意味を持つ。これらのシステムについて、なるべく簡潔にまとめようとは心掛けたのだが、ついつい長くなり過ぎた。それだけスーパーマーケット経営はサブシステムの諸要素が複雑に絡み合い、変容を続ける経営システムなのだから…と思ってお許し願いたい。
なお、私は仕事から退いて約10年になる。正直に言って、約10年は時折交わされた元仕事仲間と雑談の中で伝えられた情報以外に、新しい情報の入力はない。従って、10年前の引退時、情報ラッシュでもてあまして整理のつかなかった諸問題を、釣りとゴルフで時間を過ごしているうちに、自然に熟成(風化?)した整理枠組みに基づいてまとめたものである。その機会を与えてくれた商人舎に感謝する次第である。
一方、年寄りの冷水の感も強く、忸怩たる思いも隠せない。実務家の多くは、私以上に情報ラッシュに悩まされておられるとも思い、参考になればということで書を綴っているものである。感想・ご批判を、特にこれからの戦略論についてお聞かせいただければ幸甚である。
続きます