スーパーマーケットのマーケティング Vol.23
23. カスタマイゼーションを復活させるためのプログラム
■おいしさを喜んでもらう施策
拙稿では、ターゲットの焦点はおいしさ、手法にはこだわり商品をあげ、必然性、必要性と有効性をいくつかの角度から論述してきた。手法のこだわり商品は半世紀近く、スーパーマーケットが等閑視してきたカスタマイゼーションを復活させるためのプログラムである。
しかし、こだわり商品が固定客づくりの最善の手法とは限らない。おいしさに焦点を合わせ、固定客づくりをするためには、例えば大根は昨今、青首1アイテムに絞り込んでいる店が多いようだが、おでん種などの煮物には青首、漬物用には練馬、おろし用には辛味など、3アイテムに増やすことも効果があろう。刺身コーナーに、コチ、アイナメ、シマアジ、メダイ、ソイ等など、定番としては安定供給の続かない近海魚を継続的に入れ替えて提供すれば、刺身好きの家庭には喜ばれるであろう。
このようなお客においしさを喜んでもらう施策を継続的に数多く打ち出すお店には、徐々に新規のお客も増え、これまでのお客の流出を防ぎ、来店頻度が高まる。これが固定客づくりの基本モデルである。こだわり商品は、固定客づくりの一つの施策である。
おいしさを喜んでもらう施策を継続しているうちに、お客がその店を主に買いに行く店と認めて利用し出すと固定客という用語のイメージと一致するようになろう。
固定客が増え出す頃には、その店はおいしさを大事にする店、ないしは、おいしさを教えてくれる店というようなイメージが生まれ、お客の中に広がる。お店のこのようなイメージは、企業イメージと呼び変えてもよいが、競争戦略上の重要支柱である差別化の目標である。自動車産業でアフターケアが万全な会社などのイメージは、ユーザーの固定化に極めて重要な手段である。
スーパーマーケットで優れた企業イメージを生み出すことは、「言うは安いが、行うは難し」のことわざのように容易なことではない。
後に克服策の概要を述べるが、一口で言えば、難しく、その上時間もかかる。だから競争企業はしたがらない。競争企業が始めないうちに着手すれば、一歩リードすることになる。ただし、始めは効果は少ない。しかし、3年も経てば、効果は傍目にも明らかになりだすが、後発は遅れを取り戻すことは不可能となっている。5年も経てば後追いは同じ路線は諦めて別の路線を模索することになる。
これが拙稿が描く、カスタマイゼーションの効用である。
続きます