スーパーマーケットのマーケティング Vol.27
27.組織計画と仕事の流れ
■組織計画のレベルの差異
先述のように、組織の成熟度のレベルの違いによって、むずかしさは違う。しかし、いずれもむずかしさがあり、これを克服しなければ前には進めない。精度の高い計画書を自力ではつくれない企業では、コンサルタントを招へいしてでも、計画書は作成しなければならない。
事前調整で苦労する組織は、我慢して工夫を積み重ねることによって、組織としての調整能力高める結果も得られる。
組織の成熟度の差異は、組織計画のレベルの差異に起因するものが多い。
組織計画は役割明確化の初歩的ツールではあるが、基本となるコンセプトでもある。
テレビのスポーツ番組で、解説者が「まず基本を習得しろ。それから自分なりのプレーをつくれ。そして、自分のプレーに徹しろ。勝負は二の次だ。負けても悔いは残らない。そして、そうしないと勝てるようにはならない。」という意味のことを異句同音に言う。
昨今、ようやくうんちくに富んだ評論として理解できるようになった。
■プロセスモデルの整理
基本の習得度の差が組織の成熟度の差になって現れると言いたいのだが、成熟度の低い企業の人にはまだ組織計画のコンセプトの理解が不十分な人も少なくないのではないかと思うので、簡潔に復習をしておこう。
組織計画と仕事の流れをプロセスモデルとして整理し、それぞれのプロセスを処理する担当者を明確にきめることである。以上のことを図で示すと次のようになる。
プロセスモデルはフローチャートで流されることが多い。実際のフローはもっと長く複雑である。
成熟度の高い企業の1社では、実施の3ヶ月前から月次販売計画の作業が始められる。長い道のりを経て実施が始められるのである。
上のプロセスモデルは月次販売計画のフローを極言まで圧縮したもので、実務者のイメージとは程遠いものであろう。
しかし、こんな簡略化したモデルを使ってでも言いたいことは、商品部は仕入れ、店舗は販売を受け持つ、とか、計画は本部、実施は店舗というような粗すぎる役割分担の考え方は役に立たないのみならず、有害だということなのである。
図表の1は定番品の流れ、2は販促計画の流れである。それぞれ当月の計画コンセプトが示され、1の流れでは品揃表プライシング、陳列法、および部門別、カテゴリ別の売上、粗利益、ロス削減目標などが文書化される。このプロセスが1-2である。2の流れでは週間別、販促計画の実施要項と販促品の売上、粗利益目標が文書化される、2-2のプロセスである。1-3、2-3のプロセスでそれぞれの担当部長の承認を得て、4のプロセスに送られる。4のプロセスは月次販売会議で調整・修正が行われて最終決定となる。5以降のプロセスは主として店舗で行われるプロセスとなり、店舗の業務システムの領域に入る。
さて、提出したモデルでは捨省が多すぎて実感を持ちにくいのではあるが、プロセス1-2、2-2及び、プロセス4で示すように担当者は部門、職階を越えて指名されている。つまり、協業しろということである。
組織計画による役割の明確化は、組織の協業意識向上に不可欠なコンセプトである。協合意識向上は組織の成熟の原動力になる。
そして戦略システム、業務システム、組織システムの三者はスパイラルに上昇もすれば、下降する関係がある。
成熟期の企業競争は組織の成熟度競争といっても過言ではない所以である。
革新的戦略を展開するためには、事前準備段階において、戦略実践を障害する要因をリストアップし、だからできない、という風潮を改め、要因1つ1つを除去するための知恵を出し、組織の成熟をスピードアップする決心が肝要である。
続きます