スーパーマーケットのマーケティング Vol.33
33. 新プロセスモデルの見切り発車
■新プロジェクトを進める際の注意事項
商品リストアップの作業は商品部の部門別にバイヤーと店舗代表(スーパーバイザー、チーフなど)で会議方式で行えばよい。プログラム進行のためのプロジェクトチームが編成されていれば、プロジェクトチームからリーダーに参画してもらえば、さらに効果的であろう。
この時点の注意事項は、次の2点である。
① 作業には相当時間を要するが、参画メンバーの他の役割に支障をきたさない程度に制限すべきである。
② 商品リストを作成するにあたって、アイテム数を決める時、コモディティ商品の陳列量を減らしすぎないことと、ライフスタイル商品のアイテム数が少なすぎて効果を得られないことの間のバランスのとり方を工夫すること。
以上の2点を配慮しながらしていき時までに品揃表を作成し、十全感が得られなくても見切り発車してしまう。
■見切り発車後の注意事項
その後、成果データをフィードバックして、次の商品リスト作成に役立てることになるが、この間の注意事項は次の通り:
① 計画決定後のプロセス、特に店舗の業務システムを決め事通りに進行するようにコントロールすること。これは主として、店長、チーフの役割の問題である。コントロール機能の優劣は成果に決定的な影響を及ぼす。したがって、成果データの適切な評価ができなくなる。
例えば、単品の1日の平均売上パック数が2パックの場合、次の品揃えに継続すべきか否かを検討する。検討するに際し、商品づくり、陳列、鮮度管理などが決め事通り処理されていたならば、カットすべきと判断できる。逆に決め事が守られていないと、「守れば、5パック売れていたかもしれない」と思うことになり、決心がつかなくなる。
成果データの信頼性は、業務システムのレベル、安定性と比例的関係をもつ。成果データの信頼性は、次のステップの商品リスト作成の精度、速度、作成者の意欲に決定的な影響をもたらす。
② ライフスタイル商品の成果データは見切り発車当初の1年間くらいは2週間ごとに成果データを店舗から商品部に店舗の分析所見をつけて報告すること。バイヤーが次の品揃表を作成するにあたって、もっとも中核的な最重要情報がこの成果データと所見である。所見は次の品揃表に反映されなくても、次の次、あるいは次の次の次には、反映されるものである。
このような反復を繰り返す中で、情報は積み重ねられ、洗練され、品揃え改革に役立つ情報となっていく。役立つ情報は、時間シナジーの産物である。
■ストア・イメージの確立
おいしさに焦点を当てたライフスタイル商品の品揃えは、おいしさがよく分からないままに見切り発車をしたのであるが、おいしさを分類するためには、おいしさのパターンが積み重ねられ、洗練されることを繰り返すことが基本となる。
この間に農作物の植物科学のおいしさ、食品製造業で追求する食品科学のおいしさ、さらにはレストラン、料理教室などの料理研究のおいしさを勘案すれば、家庭が分類されるようになるはずである。
一方、スーパーマーケットに役立つ家庭料理のおいしさの分類を進めていく過程で、ストア・イメージは順次明確化し、向上する。
ひいては、カスタマイゼーションが進む。
家庭食のおいしさの分類が一次的に完結したと思える頃には、ストア・イメージは確立し、固定客数は増加し、安定する。したがって、業績も上がってくる。こんな連鎖関係を眺めていると、このプロジェクトの目標を品揃表作成に設定し、目標コンセプトをおいしさの分類基準の作成とすることの妥当性に確信を持てるようになってくる。これまた思考錯誤的問題解決の特性の1つであろう。
続きます