スーパーマーケットのマーケティング Vol.36
36. 新プロセスモデルの商品吟味
● 商品吟味への疑問
さて、前述の1番目のお店の商品吟味の仕方が分からないと訝ったのは、安心安全のための商品吟味から一歩抜けだし、他の目的も取り込まれているようだが、その新しい目的が分からないということである。
この店では、陳列商品には必ず品名カードがついている。生鮮食品の品名カードにはほとんど産地が表示されている。産地表示があるので、商品吟味が進んでいることをうなずかせる。
ある日、ジャガイモが3アイテム陳列されていた。2アイテムは北海道産、残りの1アイテムは中国産であった。北海道産はメークインと男爵であった。ただし、品名カードには品種の表示はなく、「じゃがいも」と、同じ表示であった。
そこで、私には新しい疑問が浮かび上がった。
最初の疑問は、なぜ産地表示をするようになったのだろうか、ということだ。その答えは安心安全のためであったと思われる。中国産の冷凍ギョーザがトラブルを起こした頃から、外国産と国内産を区別するため、国内産には、内地産と表示する店が増えたことを思い出した。
その後、外国産には国名を、内地産には県名、地方名を表示するようになった。内地産なら安心だというメッセージを送ることから始まり、産地名が表示された商品なら安心できるというように変わったのであろう。
次の疑問は、なぜ中国産は1アイテムで、北海道産は2アイテムなのだろうかということである。この疑問に対する常識的な答えは、中国産は安いからと、メークインと男爵の品質の違いがあるということは、すでに市場で定着しているから、ということになろう。
なお、このお店の、その日の品揃えは、大根と長ネギは国産品それぞれ1アイテム、玉ネギは中国産1アイテムだけであった。またブドウは2アイテム、隣にメロンが1アイテム陳列されていた。大根、長ネギ、玉ネギは冬の必需品であるが、ブドウやメロンは季節外れの商品である。そんなことを考え合わせると、このスーパーマーケットでは、品揃え商品カードのコンセプトを見直さなくなっているなと思うにいたった。
叙述が長くなり過ぎたが、以上が、フィードバックが新しい修正、調整課題を生み出すまでの推移を、私の体験に基づいて書き綴ったものである。
現実の組織におけるフィードバックは、この叙述よりはるかに広範囲の要因の複雑な絡み合いを整理しながら修正、調整課題を設定し、前進を続けている。一人でやれば数カ月もかかることが、組織で取り組めば、数日で処理できる。現に処理している。
組織能力の優劣は、フィードバック機能の効率に決定的な差異をもたらす。またフィードバック機能の効率化は、組織能力向上の最重要支柱でもある。
これからの企業間競争の知恵比べは、組織能力向上のための知恵比べと要約することができよう。
続きます