スーパーマーケットのマーケティング Vol.38
38. リーダーシップ論
● リーダーの3つのスキル
起死回生策は成功することは少ないが、成功することもある。優れたリーダーに恵まれれば、成功する。成功に導いたリーダーは、中興の祖などと呼ばれ、企業内外の人々から敬愛を受ける。ジャーナリズムはその人柄を称賛する。研究者はリーダーシップ論として理論化する。研究者は、中興の祖だけではなく創業者、部門リーダーなども研究対象に入れて、リーダーシップ論をまとめている。これらのリーダーシップ論は、ほとんど個人の資質を分析したものである。
ところで、これ以外のリーダーシップ論もあるので紹介してみたい。
他のリーダーシップ論とは、個人の資質の分析ではなく、うまくいっている組織の状態の分析から進められる。うまくいっている組織には、リーダーシップがあるとみて。そこにはどんな機能が働いているかを分析する。結論として、テクニカルスキル、ヒューマンスキル、コンセプショナル・スキルの3つのスキルがうまくコンバインして機能しているとき、リーダーシップがあると評価する。
テクニカルスキルとは、スーパーマーケットの場合なら、商売の能力、マーチャンダイジングの能力のことである。
ヒューマンスキルとは、人間関係をまとめる能力である。
コンセプショナル・スキルを、私は、企画分析力と訳している。
以上、3つの能力を1人で兼ね備えている人物は、稀有である。したがってリーダーシップを1人の人間の人柄、能力的資質分析をするだけでは、経営には不十分だとする説である。
● 3つのスキルの役割分担
初期のスーパーマーケットでは、社長がテクニカルスキルに優れていれば、それなりに業績を伸ばすことができた。成長期の初めのころは、社長がお父さん役、テクニカルスキル、専務がお母さん役、ヒューマンスキルに優れていれば、順調に規模拡大が続けられた。しかし、成熟期にいたっては、コンセプショナル・スキルの達人を欠いては、前進はかなわなくなっている。
なお、上記の3スキルは、それぞれ、重複の人材で分担しても差し支えない。テクニカルスキルは、立地・店舗開発戦略とマーチャンダイジング戦略、店内業務、ヒューマンスキルは人事と教育、コンセプショナル・スキルは営業企画、財務、電算システム、etc、etc。
リーダーシップは、複数の人間の持てる能力を組み合わせ、結合することによって確立し、強化される。いわば、組織のリーダーシップということであろう。中興の祖は、組織のリーダーシップをつくり上げるための人事の名手であったともみられよう。
さて、3つのスキルを、どの場面でどのように組み合わせるかは組織の知恵比べ。知識商人の腕の見せ所である。各人がよく考えて知恵を出し合い、話し合いを重ねるうちに、自ら組織の適切な知恵が生み出される。
続きます