【最終回】 スーパーマーケットのマーケティング Vol.41
41. スーパーマーケットの未来
実務家は具体化思考をするので、学者のような完全主義に陥らないで済む。計算書をつくる際にも、必ずしも理論的にはベストで仕上げなくても、自社としては、これで良いと思えば、そこで見切り発車をする。発車した後、節目節目で修正、調整を行いながら業績を残している。具体化思考の賜物である。
実在の組織は、具体化思考によって、知識を蓄積し、知恵を出し合って、組織の知恵を生み出す修練を積み重ねてきた。結果として組織規模も大きくなり、質的にも成熟してきた。多くの組織は、今後も発展し続ける自信を高めている。反面、このままで良いのかという危機意識をもっている。危機意識があったからこそ、市場、社会の変化に対応し、自社の政策を改革してきたのである。また、今後も改革し得るのである。これが組織の具体化思考の知恵である。
今後予測される組織の危機の1つに、派閥問題がある。これからは業界の再編成が進むであろう。その過程で、企業の統合、合併も多くなるだろう。企業の合併は、企業のもつ特性を組み合わせて、より強い企業体質をつくるために行うのである。しかし、その目論見は、上手くいくとは限らない。2つの組織文化を組み合わせるとカルチャーギャップが不協和音を鳴らす。
合併をしないでも、企業が拡大すると、社長派と専務派、または財務畑と営業畑というような派閥が自然にできあがり、不協和音を奏でるようになる。これらの不協和音は、業績が上がれば、予算達成度が安定すれば、自然に解消する。逆に予算コントロールができなくなると、不協和音は多く、かつ大きくなる。
組織文化、企業イメージ、経営業績の3者はスパイラルに上昇もすれば、下降もする。上昇を続けるには、時間もエネルギーも必要だが、下降しだすと加速され、なすすべがなくなる。常に上昇を続ける努力が肝要である。また3者のいずれかに陰りが表われたら、遅くならないうちに対策を打ち出すことを心がけねばなるまい。
組織には、以上2つの問題解決の知恵が育っているはずである。万一、不足していたらこれを補充する知恵を出せばよい。知識商人とは、こんな知恵を出せる商人である。自分の不得意な領域のスキルが必要な場合には、仲間から助けてもらえる知恵を、仲間から協力を求められたら、自分の役割をただちに決められる知恵をもちあわせている人材である。
現代化が進む、我が国の小売産業では、すぐれた知識商人が無数といえるほど大勢育っている。これらの人材が必ずや、今後企業に表われる数々の難問を、具体化思考による組織の知恵を使って切り開いてくれよう。明るいスーパーマーケットの未来が見えてくる。
グローバリゼーション、多面化の問題も、考えてはみたい気もするが、あまり長くなりすぎるので、今回は割愛することにする。
今後は、明るいスーパーマーケットの未来を夢見ながら、安んじて、釣り三昧と洒落こむこととする。
ただ、脳の活性化のために、時々は書きたいとも思っている。
(了)