That is the end of the world・地の果て
3日間、テキサスのオースティン、ダラスを走っている。
30年以上前に最初のホームスティー先の人に言われた。
「テキサス?」
「That is the end of the world。それは浅野君、地の果てだ」
天国のようなカリフォルニアから考えれば、
確かに“西部の荒くれカーボーイ”の大男、
バーボン・ウイスキーと喧嘩、撃ち合いのイメージがある。
2軒目のホームスティー先でのマフュー女史との会話。
当時は毎日、2000名のベトナムの難民がサンフランシスコ空港に、
着の身、着のままで、押し寄せていた。
私はこの薄汚いアジアの難民を、同じアジア人でありながら、
こんなにたくさん毎日入ってきたら、
アメリカは困るのではないかと変な心配をした。
その事をマフュー女史に聞いた。
彼女はキョトンとした不思議そうな顔をして答えた。
「浅野君はサンフランシスコから、テキサスまで車で走った事はあるか?」
もちろんなかった。
「一度走って見なさい。ミリオン・ザ・エーカー(何百万ヘクタール)の荒野、
人が住んでいない土地がある。アメリカは無限だ。
ベトナム人の100万人や200万など屁(?)ともない。」
夕闇に浮かぶテキサス州庁舎
桜が咲いていました。美しいものは良い。
2年前、一人で視察の下見を、レンタカーでした。
ダラス・オースティン・サンアントニオ・ヒューストン、またダラスと、
2000キロ近く3日間で、40店舗回った。
店舗視察は平均10分、ただひたすらに走る続けるしかない。
もちろん山などない。
見渡す限りの平原が続いている。
途中、夕立に会う。
バケツをひっくり返したような、日本的表現はここでは合わない、
雷は天を八つ裂きに割き、太平洋を逆さまにしたような雨量。
まさに水中散歩なみである。
ワイパーなど役に立たない。車を止めてじっと待機した。
やがて雨が止んだ。猛暑、熱波が瞬時に襲ってきた。
ガソリンスタンドに飲料を求めて入る。
クレジットカードで金を支払った。
インド系のオーナーが私の住所を見た。
貴方は、カリフォルニアのアラメダ市に住んでいるのか?
私も3年前まで、あの町に住んでいた。
懐かしい、帰りたい。
テキサスには、ビジネスのチャンスがあると聞き、
20年間経営をしたアラメダでのレストランを売り払って、ここにやって来た。
人生最大の後悔。それはテキサスに来たことだ。ここの夏の暑さはたまらない、
あの北カリフォルニアのような天国のような気候が、たまらなく恋しい。
しかし、テキサスの人はそのようには考えない。
この地は神から自分たちに与えられた地上の楽園。
テキサス州民であることに、偉大なる誇りを持っている。
その広大な土地、かってアメリカの中で唯一、独立国であった歴史。
優秀な企業も多い。
ハイテックのデル・コンピューター、テキサス・インスツルメント、
航空機業界でナンバー・ワンになったサウス・ウエスト航空、
小売業でもたいへん優秀な企業がある。
セントラル マーケット
スーパー業界では必ず、トップにあがる、H-E-B、セントラル・マーケット、
自然食スーパーの雄、ホール・フーズ、
地元で絶大な支持を誇るマーケット・ストリート、
働きたい会社の上位に必ず名を連ねる、コンテナストアと、
すべてテキサスが本拠地だ。
マーケット ストリート
これらの企業に共通する点。
それは、いずれもカスタマー・サービスが、大変優れていることである。
彼らは本当に親切だ。
サウザン・ホスピタリティーと呼ぶ。
ホール・フーズ
サウス・ウエスト航空は、JALのように、最初に安心・安全を標榜はしていない。
航空会社では、そんな事当たり前である。それ以上の事を誓う。
顧客・従業員を喜ばすこと、幸福にすることこそを、使命と考えている。
ホール・フーズも単なる自然食スーパーではない。
人を喜ばすこと、エンターテイメントこそ、事業の根本と考えている。
H-E-Bもエブリディー・ロープライスの単なる低価格の店ではない。
サービスこそ、彼らが売っているそのものだ。
日本も世界に冠たる、サービス大国である。
日本人は世界で一番親切かもしれない。
でもテキサスのそれと何かが違う?? 形の文化?それだけではない。
それは心の問題だ。
自己肯定の文化と、自己否定の文化との違いと考える。
昔、韓国人の大変不親切な運転手に会った。
私は尋ねた。
「君はそんなに日本人が嫌いか?」
「I hate Japanese. 日本人は憎い」
「アメリカ人は?」「I hate American.」
「では韓国人は?」「I hate Korean、韓国人も憎い」
不思議でもなんでもない。
これが自己否定の論理、その当然の帰結である。
自分が可愛いいから、人も自分が可愛いと考えられる。
自ら誇りに思うから、人も同じように、
自分を誇りに思っていることを前提で考えられる。
自分の会社や、住んでいる国を愛せない、誇りに思えない人の親切など欺瞞だ。
外国で日本の悪口を言う政治家など信用できない。
外人に馬鹿にされているのが、解っていないようだ。
自己肯定こそ、接客、カスタマー・サービスの原点であると考える。
テキサス人のサービスは自らを誇りに思う心や、自己愛から来ている。
日本人よ、もう一度誇りを取り返そう。
その時こそ、日本は、真に世界一のサービス大国と言えるのではないか?
浅野秀二 3月07日