田母神氏の講演
3月ニューヨークで行われた田母神氏講演を聞き損ねた。
ところが偶然、帰郷先の松江で彼の話を聞く機会があった。
タイトルは「日本を良い国だと言って何が悪いか?」
もう一人の講演者は作家の石氏、日本に帰化した元中国人留学生であった。
タイトルは「共産主義国家、中国の野望」であった。
田母神氏の話はなかなか面白い、
また元軍人には珍しく、理論的で雄弁でもあった。
時には漫談になりそうなユニークなスピーチでもあった。
たとえば、「鳩山さんは外国ではハトだと思われていない。
フランスではアホウドリ、英国ではチキン(臆病者と言う意味)、
アメリカではサギ(鷺)、中国ではねぎを背負ったカモ、
日本ではガン(雁)と言われている。」
これを真面目な顔して云うアンバランスは素晴らしかった。
内容はタイトル通り、日本は素晴らしい国で、ユニークな歴史を持っている。
政府やマスコミ、学者たちは日本国の力を削ぐことに一生懸命になっている。
本当のことを言うと私のように首になる。
核は使われないが外交手段として決定的な重要性を持っているなど、
予想通りの内容であった。
石氏は共産主義中国の野望は、
日本を中国の自治区にする計画ですべてが動いている。
自己主張の強い中国人が300万人日本に移民すれば、
日本征服は可能である。
小沢氏の主張する外国人地方参政権取得となれば、
県知事、地方議会、教育委員会・教科書採用、警察権力、地方裁判所など、
すべて中国政府に意向を受けた移民者に支配される。
私はこの素晴らしい日本に移民したのであって、
共産主義中国の支配する日本には住みたくない、そのような論旨であった。
これも別に驚くに値しない。多くのアメリカ人もそう思っている。
外国から日本を見ると解ることは多い。石氏も外人の目だ。
田母神氏のスピーチで気なったことがあった。
それは、アメリカを白人国家、白人国家と繰り返し語っていたことだ。
この精神が日本人の弱みである。
だから黄色人の中国、韓国と組むべきだ、となり、
戦前の大東亜経済圏や、その焼きましの鳩山政権の
東アジア経済共同体のような話になる。
政策は違うが小沢氏の考えも田母神氏も深層心理では似ている。
私は日本のビジネスマンは、政治家や軍人、マスコミと違い、
現実を生きるための、もっとグローバルな視点を持っていると信じている。
さて、話は変わるが、いまNHKで坂本龍馬をやっている。
私にとって、吉田松陰先生も坂本龍馬も青春時代の英雄であり、
テレビにかぶりつき、幕末の英雄たちの物語を見た記憶がある。
しかし、今回のNHKの坂本龍馬をアメリカで見る気がしない。
アメリカの移民史や開拓史を知って愕然とした。
祖国を捨て、太平洋や大西洋を越えて来た勇気ある冒険者、
アメリカ人移民1世は、全員が坂本龍馬のような英雄であった。
アメリカでは坂本龍馬は普通の人であったのだ。
アメリカの歴史は、この何百万、何千万人の
世界から移民してきた坂本龍馬が創った国なのである。
「白人国家」などと言っている時ではない。
謙虚にアメリカの遠大なる構想力、冒険心、勇気、忍耐を
学ばないと日本の未来はない。
小売業では20年ほど前にダイエーの中内さんですら、
アメリカから学ぶものはないと言っていた時期がある。
今でも多くの経営者やコンサルトタントの中にはそのように公言する人もいる。
すぐ真似すべき形は少なくなったが?
彼らの心のあり方、グローバルな視点、挑戦する勇気など、
学ぶべきところは多い。偏狭な日本主義に陥っては、
アメリカにも中国にも勝てない。孤立するだけだ。
日本から来る現代の坂本龍馬を私はアメリカで待ちたい。
人材教育こそ大切だ。
田母神氏の講演内容には賛同するところも多かったが、
何か欠けているような気がした。
いつか誤解を解くべく、ゆっくりと話する機会があれば光栄だ。
浅野秀二
4月26日