Fresh & Easy Neighborhood Marketのその後
ヒットラ―・ナチスによるロンドン爆撃の時、
イギリス首相・チャーチルは、平然として「We never give up」 と語ったと言われる。
アングロサクソンは柔ではない。また日本の武士ほど潔くもない。勝つまでやる。
英国のテスコ社が、2007年秋、ロス、ラスべガス、フェニックスで挑戦した
Fresh & Easyの小型店が、毎年大きな赤字を出している。
テスコ社の社長が「ネバー・ギブ・アップ」と言ったか?どうかは知らないが、
私は何度、撤退する噂が出ても、それはないだろうと信じている。
それより、早く北カリフォルニアのサクラメント(2010年の秋にずれ込む予定)
に進出してくれるのを期待している。
家電のサーキット・シティの跡地に、ロスの自然食マーケットのヘンリーズも
サクラメント進出を決めたので、これからロスに視察に行く理由は少なくなって来る。
サンフランシスコとサクラメント、北のナパ、南のぺブル・ビーチ、モントレー方面、
サクラメントから内陸に2時間半走れば、アメリカで最初の国立公園、ヨセミテもある。
北カリフォルニアは流通視察の魅力で一杯だ。
<簡単な概要>
Fresh & Easy Neighborhood Market
US debut(アメリカ初出店): November 2007
US Headquarter(アメリカ本社): El Segundo, CA
Annual Sales(年間売上高、2010年2月27日): $554.7Mil (554万7千ドル)
Annual Profit(Loss)(年間利益): (253.9Mil) (253万9千ドル損失)
Number of Store(店舗数): 計159, California: 98, Arizona: 34, Nevada: 27
テスコ社は撤退どころか?
Fresh & Easyの長期的成長を目指しているように見受けられる。
ロンドンのテスコ本社は、彼らは着々と米国で成功をもたらしていると信じており、
不況の終焉が、やがてそれを明らかにすると、考えている。
若い人からも、年寄りも、あまり豊かでない人も、金持ちも、
あらゆる人種からも店は愛されていると考えている。
しかし、F&Eの成功を疑ってきたあるコンサルタントは、
人口の密集地、ニューヨーク、シカゴ、などに小型店300店舗と、
本格的スーパーを造り、そのコンビネーションでもない限り、
アメリカの食品小売で大きなインパクトを与えることはないと言っている。
別のコンサルタントは、他のスーパーの買収するなりしないと、
インフラが十分ではないとも言っている。
テスコ社は非常に学びの早い企業であり、アメリカ市場からの撤退はあり得ないが、
現在159店舗の店ではアメリカのコンビニ店に影響を与える程度である。
スーパー業界には、その地区においてドミナントにならない限り、
インパクトを与えるようにはならない。
F&Eの店では、足らないものを補充する程度が現実である。
ようするに大型店舗のようにワン・ストップ型になっていないのである。
テスコ社に予定はないものの、大型店舗を経営する可能性はある。
不景気の中、不動産は20%近くも下がっており、
新しい大型店を挑戦する良いタイミングかもしれない。
<売り上げと損益の現状>
さて、2010年2月27日現在、F&Eは$253ミリオン赤字、
2009年には$208ミリオンを出した。
多分これで損失はピークを過ぎただろうと考えられている。
店によっては、本当にものすごく人気がある店もあり、アメリカの不景気が終わり、
経済状況が良くなれば、損失は間もなく利益に変わっていくはずと期待されている。
F&Eの売り上げは74.8%も伸びて、145店舗で$544.7ミリオンになった。
115店舗で$305.4ミリオンから既存店5%を伸ばしている。
昨年は一店舗あたり、$3.8ミリオンの売り上げ、その前は$1.8ミリオン、
しかも2009年は年の後半に開店をしたにも関わらず、大幅な伸びを示している。
オーガニックと、新しいユニットで、2010年は50%もの成長を期待している。
<成長拡大>
今後は初期の予定通り、北カリフォルニアに37店舗、
18店舗サンフランシスコ周辺、サクラメント周辺には19店舗建設予定だ。
ストックトンには配送センターを造り、北カリフォルニアは最終的には
50~70店舗になると考えられている。
2011年以降はシカゴなどへの進出も有望と考えら得ている。
それは人口が密集しており、ヒスパニック系が多いことが理由だ。
その他、この小型フォーマットで、デンバーや、ソルトレイク市なども面白い、
何しろテスコ社はロンドンでは小型店で8百万人から1千万人に好まれている店である。
さて、アメリカ進出2年半で、いくつか変わったことがある。
●種類が増えたこと、1000以上のアイタムが増えた。
そのため中央のゴンドラが61インチから71インチと高くなり、
多くのPB商品が並んでいる。
●初めて広告をだした。
2009年の9月から春先かけ、ラジオ、ビルボード、
地域内の印刷物などを使って、一年のキャンペーンの開始。
●もっと栄養化の高い商品ラインの導入。
味に妥協することはなく、Eatwell ラベルでダイエットなどを
コントロールする情報を提供し、消費者の手助けをする。
●エンド陳列には、Facebookや Twitterなどで触れる商品を重点的におき、
お互いがソーシャル・ネットワーキングで推薦や、コメントが出来るようにした。
<売り上げボリュームの増大>
一番大切なことは売り上げの増大だ、それが可能なら必ず利益に転ずる。
店舗デザインはそのまま置くとしても、もう少し店舗数を増やす必要がある。
そしてプロモーションが必要だ。
それは安さをアピールしてこそ、この不景気の時代には効果的と考えられている。
ロイヤリティープログラムなど必要はない。
店はもっと地域に密着し、地元の人の好みに合わせ、
マーシャンダイジング・ミックスでインパクトを与えることだ。
市場が望む物を提供すること、店舗を開ける前リサーチはしただろうが、
開店後に再びそれを修正する必要が出て来たことを認識すべきだ。
F&Eは、なかなか良いPBを持っている。価格も品質のバリューがある。
全面的なセルフ・レジは見直した方が良いだろう。
少なくとも1~2台にはキャッシャ―がいた方が良いと考える。
野菜をパッケージで売ることには、アメリカの消費者も慣れて来た。
これは一般スーパーも最近取り入れている。棚が深いのには問題がある。
売り上げ増には、配送センターやロジスティックスに投資が必要である。
景気の良い時にリース契約を結んだので、家賃も高すぎる。
アメリカでは初めて、生鮮の価格をさげる。
見切り売りは人気があるが、夕方の売れた後の棚が空いた状態は
見られたものではない。
とにかく消費者の好みを理解して独自の戦略が必要だ。
今後も注目してF&Eの推移を見守りたい。
浅野秀二
5月25日