楽しくて、世のため、人のためにもなる
日経新聞8月1日、ページ7に面白い記事があったので、
思わずここに書くことにした。
マサチューセッツ工科大学、名誉教授レスター・サロー氏の
インタビューの記事で、20世紀最高のエコノミスト、
ケインズの言葉が紹介されていた。
「大恐慌の克服法は狂ったように紙幣を印刷し、
狂ったように景気刺激策を打ち出すことだ。
大恐慌を治すなら国民の半分を使ってケンタッキー州の
陸軍基地にある金塊を全部埋め、彼らに時給$5支払う。
次に残る半分の国民に、その金塊を掘り起こさせる、
見つけた人は、その金を自分の物にし、それを全部消費する。」
これが不況脱出の処方箋だと言う。
私も時々、日銀券をたくさん刷って
一人100万円配ったらどうなるか?と考えたりする。
日本経済はデフレから脱出、円は他の外貨に対して暴落、
それは思うツボではないかと?
しかし、やはり長期的に考えると生産性を伴わない金の分配、
これは国民を無責任・怠惰にする。
社会主義崩壊でそれは経験している。やはり浅知恵か?
次の写真は、アメリカの証券専門紙Barron’s、8月9日の記事である。
デフレの処方箋として、2兆ドルの緊急緩和をするというのである。
ドルを印刷して、印刷しまくるのである。
これが日本的沈滞を避ける方法だと、写真のマンガの下に書いてある。
これがオバマ大統領の民主党政権の政策だ。
共和党支持者は、オバマの社会主義的経済政策は失敗すると信じているが、
共和党にも大幅減税以外の不況脱出の妙案は聞かない。
日本は700兆円近い負債をつくって公共事業をやってきたが、
いまだに不景気、それをケインズが生きていたら、どう説明する?
きっと、日本の官僚特有の小出しだったから成功しなかった。
狂ったように景気刺激を打てば違った。とでも言うのか?
ケインズ政策を、緊急治療とインフラ整備に限るべきだった。
日本はモルヒネを長く使用しすぎた。
自民党によって死に体にされたが、民主党はそれにまたモルヒネを打つという。
多小の延命には成功するが、これで日本は終わる。
レスター教授は、日本に内需が広がらない理由は、
技術革新がないからと言っている。
アップルのiPodには徹夜で行列するが、ソニー製品には並ばない。
ようするに楽しさがないというのである。
日本は真似は成功したが、追い抜くにはイノベーションが必要で、
イノベーションは政府でなくて、教育だと言うのである。
日本には無駄なことしている社員が多い。
たとえば銀座のデパート、お辞儀は非生産的というのである。
日経の記者が「それは文化の問題だ」いうのには、
どちらが、経済成長に優れているか?と反論している。
私も昔から百貨店の朝の入口に並んでするお辞儀は、
山口組の挨拶と同じだと言い続けてきた。
ロボットがお辞儀をした方がもっと楽しいし、
客の目を見て微笑してた方がうれしいはずだ。
ついでにもっと脱線すれば、
2009年盛和塾で最優秀経営者を受賞した
サリナスの世界最大のラン栽培農家の松井さんは、
JALにも知られる存在になった。
彼が日本に行く時、サンフランシスコ空港で支店長が挨拶に来た。
成田でも重役が、バンコックでも現地責任者が挨拶に来た。
松井さんは失望した。
「せっかくUAの利用をやめて、JALを応援しているのに、
これではJALは再生できない。
俺に挨拶に来るような経営は無駄だ。
稲盛会長に電話しなくては?」
これもJALは 文化論とかたづけるのか?
ホールフーズはこの不景気の中、コストカットと売り上げ増で、
昨年の四半期と比較して88%も利益率を上げた。
低価格で攻めているウォルマートは既存店のマイナスなど、
苦戦をしている。
「小売業はエンターテイメント産業」と喝破した
スチューレオナルドの創業者。
ホールフーズの経営。
いつの世も楽しさが、不況脱出のキーワードだ。
現代は、楽しさと人々の健康、世界の環境破壊につながらない経営が
求められている。もちろん、コスト管理は言うまでもない。
レスター教授の話から、不況脱出には、
政府の公共事業と、民間の楽しさに繋がるイノベーションの
コラボレーションが必要と理解した。
ローマにも、7万キロの石を敷き詰めた道路や、
市民の一人あたりに1000リットルの水を供給した
11本の水道橋などの公共事業があり、
市民に娯楽を提供した7万2000名の収容能力を誇った
コロッセオ・円形闘技場では、奴隷の剣闘士同士の戦いや、
ライオンと人の格闘などを市民は楽しんだ。
これはあまりにも刹那的で破滅的だ。
現代では、楽しみはあくまで、世のために、人のためになる
知恵と愛をベースとすることが前提となる。
2000年前よりは、人類・社会は精神的には
多少は進化していると信じている。
浅野秀二
8月10日