小国の幸福 ~スイスの旅 その2~
スイスは九州ぐらいの広さに
約760万人が住んでいる。
国の面積こそ狭いが、
公用言語はドイツ語、フランス語、
イタリア語、スイス語の4カ国語。
その上、国民のほとんどが英語も使う。
この多様性、柔軟性こそ、スイスの強さだと理解した。
一時、壊滅状態に陥ったスイスの時計業界は
見事に復活した。
日本の時計メーカーは
セイコーやシチズンくらいしか知らないが、
スイスはロレックス(ROLEX)、オメガ(OMEGA)、
ブライトリング(BREITLING)、パネライ(PANERAI)、
スウォッチ(Swatch)など、有名ブランドだけでも18社もある。
その他、大小合わせると、600社もあり、
合計売上高1兆4580億円とは正直、驚いた。
スイス通貨高や高い給与にもかかわらず、
2012年は19.1%も伸びている。
堺屋太一氏の言葉を借りれば、
日本社会は、供給者の論理であり、
旧帝国海軍・陸軍・官僚組織など、
すわなち、規格大量生産型の工業社会を
形成するためだったとなる。
そしてそれにマッチした日本の流通業は、
旧態依然とした柔軟性のないチェーンストア理論と標準化の中にあると
解釈できないか?
アメリカであれほどもてはやされた、
アルバートソンやシアーズの凋落は明白だ。
ただし、ウォルマートは中産階級以下を対象にしているので
規格大量生産型でもよい。
最強のスーパーマーケット、ウェグマンズの商品政策は、
1967年当時、すでにこのように述べられている。
「誰もがやっていない商品を扱い、
まだどこでも提供されていない商品、ユニークな商品のみが、
高い利益を生み出すのだ」
その商品政策の結果、ウェグマンズは
生鮮、惣菜、フードサービス重視の店づくりをした。
日本の成功の仕組みは、
低賃金の韓国、台湾、中国を前にもろくも崩れつつある。
ユニークさと付加価値で再挑戦が必要だ。
スイス時計業界の隆盛をみて、
スイスの挑戦に学ぶものがありそうな気がした。
(短絡で言葉が不十分ですみません)
さて、そんな理屈はともかく。
アルプスの大自然の景観と比較すれば
人間の営みなど、小さなことに思えてきた。
標高4478mのマッターホルンの展望台(2288m)まで
登山鉄道で登った。
山をバックに赤ワインで乾杯だ。
4000メートル級の山々の大パノラマだ。
いつも富士山が世界一と思ってきたが、
マッターホルンの頂上はユニークな形をしていて、
ものすごい迫力がある。
「世界一の山はたくさんある」ということがわかった。
ここでもユニークさが重要だったのだ。
美しいスイスの自然と最高の気候に、
無性に山歩きがしたくなった。
ここにはお金には代えられない感動がある。
マッターホルンに行くために、シェルマットの街に泊まった。
そこは日本人観光客で溢れかえっていた。
地元の人いわく、
「毎年6月から9月まで、
Japanese Invasion(日本人の侵略)があります。
でも彼らはとてもいい客で、大歓迎です」
銀座並みの日本人の群れが
こんなところでみられるとは思わなかった。
この町が日本人に人気があるとも知らなかった。
世の中、知らないことばかりだ。
<By 浅野秀二>